本稿は、イスラエル発のDSPプラットフォームを提供するTapticaのマーケティング担当コーエンさまに寄稿していただきました。
CPI広告の現状
CPI(シー・ピー・アイ)は、モバイルエコシステム上で一番メジャーな指標として使用されています。最近では、CPA(コスト・パー・アクション)に移行する動きもありますが、未だにCPIが根強い傾向にあるのです。CPAのシェアが拡大しない理由は、CPAがまだニッチの指標でありテクニカル的に導入が難しい、またユーザーのプライバシーに関わる情報を共有する必要が生じたりと、広告主とパブリッシャーの望むポイントが合わない等、いくつかの理由を挙げることができます。
以下のグラフは2017年8月の統計で、全世界を対象にしたアプリでのユーザー獲得に掛かる平均コストです。
- CPI(1件のインストールに掛かるコスト)$4.08
- CPR(1件当たりの登録獲得コスト)$8.22
- CPR(1件当たりの予約獲得コスト)$28.98
- CPO(1件の注文を獲得する為に掛かった販売促進費用)$53.11
- アプリ内CPO(アプリ内で1件の注文を獲得する為に掛かったコスト)$74.93
- Cost per subscription(コスト・パー・サブスクリプション、1件の予約購読注文を獲得する為に掛かったコスト)$148.01
1件に掛かる費用を比較すると明らかにCPIは低コストであることが分かります。また、大きなボリュームから良質なユーザーを獲得できるのもCPI広告の魅力です。この為、国と国を跨ぐグローバルなキャンペーンでもCPIは主要な指標として使用されています。
iOSとAndroidのCPI平均(グローバル)
グローバルでのiOSとAndroid の平均CPIは、Androidが$0.44でiOSが$0.86です。デジタル先進国以外の数値も含まれている為に低く感じるかもしれませんが、これがグローバルの平均になります。世界ではAndroidのシェアは高い(世界全体の7割以上を占める)のですが、CPIの金額はiOSの約半分です。iOSユーザーはアプリを使用するユーザーが多く、課金も高い傾向にあるため、競争力が高くCPIは高い結果になっています。これは、日本市場でも同じことが言えます。
次は、モバイル利用率の高いアメリカ市場に絞りカテゴリ及びデバイス別に平均を見てみましょう。
アメリカでは、iOSユーザー53%に対しAndroidが45%のシェアを占めています。CPIの金額は、カテゴリ別に多少の開きが見られます。全体的なアメリカのiOSのCPIは、平均$2.07で、Androidの平均は$1.72です。ちなみに、日本はデバイスの比率は異なりますが、iOSが$2.70、Androidが$2.06でアメリカよりも平均は高い傾向にあります。
最後に、グローバルのソーシャルネットワーキング及びAppleの検索広告の平均CPIを比較してみましょう。
- Facebook広告 $1.80
- Twitter広告 $2.53
- Instagram広告 $2.23
- Appleの検索広告 $1.00
巨大なソーシャルネットワークFacebookは、グローバルで月間23.2億のアクティブユーザーが存在し、マルチな属性を持つデータを抱えています。この世界一大きなプラットフォームでグローバルにユーザーを獲得するには最低$1.8のコストが掛かってくることが上のグラフで理解できます。一番高いのはTwitterの$2.53です。そして、日本でも8月2日から解禁されたApple提供のSearch Adsの平均は$1.00になり、SNSと比較すると低いCPIレートになることが分かります。ただ、日本ではまだ開始したばかりのサービスの為アメリカと似た結果が出るかはまだ分かりません。
CPIのベンダーを選択するポイント
実際CPI広告のモバイルキャンペーンを検討する際に、どのようなポイントを踏まえる必要があるのでしょうか?ベンダーを選択する3つのポイント紹介します。
透明性
広告主、ベンダー、計測ツールパートナーの透明性及び信頼性を確保できることが重要です。透明性は、新規ユーザー獲得のキャンペーンを運用していく上で様々な面において最大の武器になります。データ及びコミュニケーション、両方の透明性の確保が必要です。リアルタイムでコミュニケーションを取れる開かれたチャンネルを築くことで、すべての当事者が同じ事案に対応できます。
独自のテクノロジーがある
企業独自のテクノロジーがあるベンダーを選びましょう。専門のチームがいつでも迅速に対応するためには、自社のテクノロジーであるかどうかがポイントになります。Tapticaでは、DMPとDSPを結合させ、キャンペーンを効率的に運用することを実現しています。
フラウド対策をしている
アドフラウド問題は、巨額なコスト面の問題はもちろんのこと、それ以上に懸念されるのはフラウドがもたらす不信感、そしてそれらが生み出した偽情報が流通することです。ベンダーは、フラウド対策をしっかり行っている企業を選びましょう。日々のデジタル進化とともにフラウドも進化しています。フラウド対策は、対策ツールを利用することも一つの手段ですが、まずはフラウドに対する豊富な知識と経験でフラウドを防止できる優秀な人材を持つベンダーを選択することが一番重要です。
まとめ
CPIは、どこの国でもすでに定着しており、コスト面でもテクニカル的な面でもスムースに使用できる指標です。実際には、広告主はインストール後のアクションを目標とするためにCPAを望み、パブリッシャーは彼らの得意とするCPMを提案したいところのようですが、両者の間をとったフェアーな関係を保つ指標がCPIと海外では一般的に考えられています。そして、アプリのシェアを拡大するには、まずユーザーにアプリをインストールしてもらう事が第一で、CPIはその最初の段階をクリアしており、その点がインプレッションやクリック数と大きく異なります。アプリのグローバル展開には欠かせない指標であり、海外のモバイルマーケターと情報共有する際に基本情報となる指標はまだ当分の間CPIになるようです。