2020.02.14
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昨今、サブスクリプションの浸透により、顧客の購買行動は購入して終わりではなく「購入してからが始まり」へと変化してきました。また、インターネットの普及により、SNSやブログでの口コミが消費者の購買行動に大きな影響力を持つようになりました。このため、企業や商品・ブランドに対する愛着・信頼・好感度をあらわす顧客ロイヤリティに注目が集まっています。
そこで、この記事では顧客ロイヤリティについて説明するとともに、顧客ロイヤリティを高める意義、計測方法、向上させるためのポイントについて紹介します。
顧客ロイヤリティとは、企業や商品・ブランドに対する顧客の愛着・信頼・好感度をあらわします。顧客ロイヤリティは行動ロイヤリティと心理ロイヤリティのふたつに分類されます。
行動ロイヤリティとは企業の商品をリピートして購入したり、友人や知り合いに企業の商品・サービスを勧めたりといった、顧客の自社商品・サービスに対する行動のことを指します。心理ロイヤリティは、顧客が利用している商品やサービスに対して抱く愛着や信頼といった感情のことを指します。
一般的には商品・サービスの愛着や信頼などの心理ロイヤリティ向上によって、リピート購入や他の人におすすめする行動ロイヤリティがあらわれるとされています。
株式会社EmotionTechが2015年度に実施した調査によると、顧客ロイヤリティは、企業・ブランド・商品における3点に大きな影響を与えることがわかりました。3点とは顧客単価、リピート率、口コミの発生率で、顧客ロイヤリティが高いと3点の数値が向上することがわかりました。
また、アメリカの大手コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー社の名誉ディレクターである、フレデリック・F・ライクヘルドが発表した1:5の法則、5:25の法則では、「既存顧客を維持するコストは新規顧客を獲得するコストの5分の1である」「顧客離れを5%改善すれば、利益が25%最低でも改善される」という法則が明らかとなっています。
また、既存顧客に対する販売活動のROI(投資利益率)がかなり高いことも、顧客ロイヤリティが注目されている要因のひとつです。
顧客満足度とは、顧客が購入した商品・サービスに対して感じる満足度のことです。一昔前の既存顧客向けのマーケティングでは顧客満足度を調査するのが一般的でした。しかし、実際に顧客が満足しているかどうかはあいまいで、計測しづらいという側面がありました。
また、商品・サービスに満足していても、価格が高い、意思決定者が変わるなど他の原因で競合他社の商品・サービスに切り替えてしまうことがあります。したがって、顧客満足度を詳細に解析して改善し、向上させたとしても解約が減らない可能性もあるのです。
一方、顧客ロイヤリティは業績との関連性が高く、今後の売り上げにつながるかどうかの指標になります。自社の商品・サービスに愛着を持っている顧客が継続購入に至っているかを数値化することで、顧客を選別してLTV(顧客生涯価値)を高めていくことができるのです。
顧客ロイヤリティについて誤解しがちなポイントとして、LTVが高い顧客=ロイヤリティの高い顧客とは限らないという点があります。
LTVが高い顧客の中には、「競合他社に乗り換えるのが面倒で仕方なく使い続けている」「特に愛着があるわけではないが、惰性で買い続けている」といった顧客が含まれている可能性があります。これらの顧客をロイヤリティが高い顧客だと判断してしまうと、誤ったアプローチを展開してしまう可能性があります。
顧客ロイヤリティを正確に把握する方法については、後ほど「顧客ロイヤリティの測定方法」の項目にて詳しくご紹介します。
顧客ロイヤリティを高めることは、さまざまな効果をもたらします。ここでは顧客ロイヤリティを高める4つのメリットについて紹介します。
ロイヤリティの高い顧客は、1回の購入金額や年間の平均購入金額が高くなる傾向があり、企業が提供する他の商品・サービスを購入する可能性も高くなります。顧客ロイヤリティが高いほど、顧客単価は上昇し、全体の顧客数が少なくても売上アップが期待できるのです。
ロイヤリティが高い顧客は、商品・サービスに愛着を持っているため、自由闊達な意見を出してくれます。本当に愛着を持って使っているからこそ、通常のアンケートでは得られない厳しい意見も貰うことができます。商品やサービスに関する意見を募るには、顧客ロイヤリティの高い顧客を集めて意見を交換するモニター会を開催するのがおすすめです。
また、自身の意見が反映された商品やサービスに対して、さらに愛着を持ってもらうことができるため、顧客ロイヤリティの向上とともに口コミによって周囲へ宣伝してもらえる効果が期待できます。
ロイヤリティが高い顧客は、商品・サービスに強い愛着を持っているため競合他社へ切り替えることを考えず、自社の商品・サービスをリピートして購入・利用するようになります。
このため解約率の低下につながり、サブスクリプションサービスやSaaSサービスの場合は収益が向上します。
ロイヤリティが高い顧客は、友人や家族に自身が使っている商品・サービスを勧めることがあります。人は友人や家族からの口コミは信頼性が高いと感じるため、新規顧客になってくれる可能性も高くなります。また、SNSや口コミサイトなどで商品やサービスをおすすめしてもらえれば、広告費をかけずとも新規顧客を獲得することが可能です。
ここでは顧客ロイヤリティの計測方法としてNPSを紹介し、NPSの測定方法、メリット・デメリットを解説します。また、NPSの活用事例も紹介します。
NPSは英語でNet Promoter Scoreの略で、顧客ロイヤリティを測定するグローバルな指標です。この指標も1:5の法則を提唱したフレデリック・F・ライクヘルド氏が発表したものです。
アップルやGEなど多くの有名企業が有効性を立証したことで、欧米の売上上位企業を中心に広まりました。従来計測が困難だった顧客ロイヤリティを数値化することで、企業と顧客との接点におけるカスタマーエクスペリエンスの評価・改善に活かされています。NPSは事業の成長率と高い相関性があるため、日本でも注目を集めています。
自社の商品・サービスを購入した顧客に「あなたがこの商品・サービスを友人や同僚におすすめする可能性はどのくらいありますか?」と質問し、0~10の11段階で評価してもらいます。そして、回答結果をもとに顧客を次の3つのタイプに分けます。
NPSは推奨者の割合から批判者の割合を引くことで求められます。
NPS=[推奨者の割合(%)]-[批判者の割合(%)]
推奨者しかいない場合のNPSは100で、批判者しかいない場合のNPSは-100、推奨者と批判者が同数の場合のNPSは0です。100人の回答者のうち、推奨者が20人で批判者が50人の場合、NPSは20-50=-30となります。
なお、調査結果の信頼性を確保するには、400人以上のサンプルが必要ですが、この時の誤差は±5%です。誤差を±2%にしたい場合は、2,000人以上のサンプルが必要です。
NPS測定によるメリットはふたつあります。
ひとつ目が、計測方法がシンプルで理解しやすいことです。
NPSは質問数も1つだけで、計測方法も単純なので、経営層から現場のスタッフまで数値の意味を理解しやすく、社内で浸透しやすい指標です。また、数値目標の設定と半期ごとの振り返りが容易にでき、未来を予測できる指標なので、どのような施策を採るべきか検討しやすく、売上向上にもつながりやすいというメリットがあります。
ふたつ目が、競合他社との比較がしやすいことです。
NPSは同じ質問で統一して計測できる指標であるため、競合他社との比較がしやすく、業界での自社のポジションが明確にわかります。自社のスコアが競合他社より劣っていれば、早急に商品・サービスの改良点の模索を行うべきでしょう。
NPSにはデメリットもあります。NPSは回答者の感覚に委ねられることが多く、回答者が評価した理由の科学的根拠に乏しいと批判されることもあります。
また、日本人の回答は中央である5に偏る傾向が強く、他国とくらべるとNPSが低くなる傾向にあります。さらに、NPSが仮に高くてもスコアの高い回答者が実際に友人・知人に勧めたり、SNSで拡散したりするかはわからないため、売上向上に直結しない場合もあります。
ここではNPSの活用によって顧客ロイヤリティの向上に成功した企業の事例をふたつ紹介します。
美容クリニックAでは顧客満足度調査を行っていましたが、業績の向上にはつながっていなかったためNPSの調査を開始し、顧客ロイヤリティを高める施策を始めました。
同クリニックでは、顧客の一部にメールによるアンケートを実施し、顧客満足度とともにNPSを調査しています。全クリニックの平均目標NPSを設定したり、月ごとの各クリニックのNPSをランク付けしたりする活動を実施し、その結果、各クリニックがNPS向上のためのPDCAサイクルを回すようになり、医師別や施術別ごとのNPSを計測することで、問題点が明らかになりました。このように問題点を改善した結果、顧客ロイヤリティを高めることに成功しました。
競合が多いダイレクト型保険は、顧客の乗り換えが頻発します。そこでB社では乗り換えを防ぎ、保険の契約を継続させるために全社でNPSを導入し、顧客に対する理解を深めています。
顧客にアンケートを行い、NPSや顧客満足度の低い顧客に直接ヒアリングを行うなどの方策を実施。B社では顧客側の要望に応えることで、顧客の信頼を獲得し、顧客ロイヤリティの向上に成功しています。その結果、評価の高い口コミが広がり、ダイレクト型保険でトップクラスの実績を上げ続けています。
顧客ロイヤリティを高めるためには実際にどうしたら良いのでしょうか。ここでは顧客ロイヤリティを高めるための考え方やポイントを4つ紹介します。
カスタマーエクスペリエンスとは、顧客が商品やサービスと接する一連の体験を意味します。商品の使用時だけでなく、Webや口コミから受ける印象や導入前の営業や導入後のサポートから受ける体験を含めて、顧客の体験を一連のプロセスであらわしたものです。
すべての顧客体験のデータを書き出し、その中で顧客ロイヤリティを低下させてしまっている体験を改善していくことによって顧客ロイヤリティは向上します。
特に、購買直後の顧客は不安を感じているので、企業が提供するサポートや発信する情報にセンシティブになります。また、購買直後の顧客体験は顧客の印象に残りやすく、良い印象も悪い印象も強くイメージに残るため非常に重要な段階なため、慎重かつ丁寧に対応する必要があります。
各々のプロセスで顧客の期待以上の体験を提供できると、顧客が企業・商品・サービスのファンになり、顧客ロイヤリティの飛躍的向上が期待できます。
Business Insider Intelligenceの調査によると、60%の人が「カスタマーサービスの対応の悪さで購入をやめた経験がある」と回答しています。近年は、苦情や返品、問合せなどの対応が悪いとSNSやブログなどで拡散されてしまうため、ブランドイメージや商品・サービスのイメージに多大なダメージを与えます。
顧客対応の品質の悪さや遅れは顧客満足度および顧客ロイヤリティ低下に直結するので、カスタマーサービスを重視し、迅速な顧客対応を心掛けるようにしましょう。
TwitterやFacebookなどのSNSを利用する際は、一方的に情報を発信するのではなく、双方向でコミュニケーションを取るようにしましょう。顧客の意見にスピーディかつ的確に返信することによって、顧客との友好的な関係を構築、維持できます。
また、SNSは顧客が自由に意見をいえるツールなので、カスタマーエクスペリエンスのそれぞれのプロセスに対する顧客のニーズ、本音を知ることができます。
衣料品を扱う株式会社バーニーズジャパンは、ロイヤリティの高い顧客の情報を熟知しています。クローゼットの中にあるものから、インドア派なのかアウトドア派なのかなどライフスタイルについても詳細な知識を持っています。さらに、来店時の会話内容の記録も担当者同士で引き継いで、均一な対応を提供することで顧客との信頼関係を構築しています。
企業が顧客個人のことを理解し、一人ひとりが喜ぶようなサービスを提供すれば、顧客は自分が大切にされていると感じます。誕生日に特別なクーポンや特典を贈ったり、限定された顧客に新商品・サービスの体験会を催したりと、特別な体験を提供する手法もあります。
このように、ロイヤリティの高い顧客に対して特別な施策を提供することで、顧客ロイヤリティをさらに高めることが可能です。
この記事では、顧客ロイヤリティの意味と高めるメリット、計測方法を紹介し、顧客ロイヤリティを高めるポイントについて解説してきました。
2割の優良顧客が8割の売り上げを占めるともいわれており、収益性や業務効率を上げるためには顧客ロイヤリティを高めて優良顧客を増やすことが重要です。顧客ロイヤリティを高めるためには顧客の意見を傾聴することが最も大切です。顧客がどこに満足し、不満を持っているのかを正確に把握し、問題点を改善して顧客ロイヤリティを高めて売上アップにつなげましょう。
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