AIでエンゲージメントを加速させる~モバイルメッセージングの未来~

Repro Journal編集部
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2025.05.15
AIでエンゲージメントを加速させる~モバイルメッセージングの未来~

目次

アプリマーケターにとってAI革命は単なる業務効率化に止まりません。エンゲージメント戦略の立案、構築、実行の方法そのものを大きく変える転換点です。かつては手作業で時間のかかっていた作業、例えばCV(コンバージョン)を意識したプッシュ通知キャンペーンの作成やクロスチャネルジャーニーの最適化も、今ではAI搭載のツールによって自動化されつつあります。

マーケターはAIにどう向き合うべきなのでしょうか。そして、最大の効果を得るためにはどのようにAIを業務フローに統合すればよいのでしょうか。本記事ではその実践方法を詳しく解説していきます。

この記事は、OneSignalのブログ “Boost Engagement with AI: The Future of Mobile Messaging” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。

なぜモバイルメッセージングにAIが必要なのか?

【図】AIによるモバイルメッセージングのイメージ

アプリマーケティングにおけるAIの台頭は、次の3つのファクターが後押しをしています。

  1. データ量の爆発的な増加
    ユーザーはアプリ操作を通じて膨大な量の行動データを残します。しかし、これを手作業で分析するのは非常に労力がかかるものです。AIはこのようなデータを効率的に処理・解釈することが可能です。
  2. ユーザー期待値の高度化
    消費者は即時かつパーソナライズされたコミュニケーションを求めています。AIを活用することで高いレベルのエンゲージメントを実現できるようになります。
  3. AIモデルの進化
    自然言語処理(NLP)や機械学習(ML)に支えられた最新のAIは、これまで自動化が難しかった複雑なマーケティングタスクにも対応できるようになっています。

AIをいち早く取り入れたマーケターは、競争優位を手にすることができるでしょう。単純作業の自動化だけではなく、AIを活用して“人間らしさ”を感じさせる、パーソナライズされかつデータドリブンなエンゲージメント戦略を構築できるようになるからです。

モバイルマーケティングの業務フローにおけるAI活用

AIの活用に馴染みがない場合、業務への導入を難しく感じるかもしれません。そこで、シンプルな取り組み方を紹介します。

  • AIは「代替」ではなく「アシスタント」
    AIは、意思決定をサポートする賢いパートナーのような存在です。人間の創造性を完全に置き換えるものではありません。
  • 自動化より「拡張」を重視
    すべてを自動化しようとするのではなく、ユーザー行動の分析やコンテンツのA/Bテストなど、既存のプロセスを補強する用途からスタートしましょう。
  • まずは「試す」その後に「最適化」する
    AIは万人に同じ効果をもたらすわけではありません。小さな実験から始め、ユーザーにとって何が最も効果的かを見極めた上でAIドリブンな施策を拡大していきましょう。

モバイルメッセージングにおけるAI活用のベストユースケース

CVR(コンバージョン率)の向上、リテンションの強化、メッセージ戦略、いずれの改善を目指す場合でもAIは有用です。膨大な量のユーザーデータを分析し、スマートかつ自動的に判断を下すことが可能になるからです。

【1】パーソナライズされたコンテンツおよび商品レコメンド

もはや「適切なタイミングで適切なメッセージを届ける」だけでは不十分です。AIを活用すれば、「適切なタイミングに」「最適な形式で」「最もふさわしいコンテンツや商品、機能」を届けることが可能になります。

アプリ内の行動履歴、購入履歴、エンゲージメント傾向などを分析し、AIによるレコメンデーションエンジンが各ユーザーの好みに応じてメッセージを動的に最適化。CVRやLTV(顧客生涯価値)の向上を期待できます。

【活用例】

  • メディアストリーミングアプリが、ユーザーの視聴履歴や視聴時間帯に基づいてプレイリストをキュレーションして提案する。
  • ECアプリが、過去によく閲覧されたがまだ購入されていない商品を、緊急性を訴えるメッセージで訴求する。
  • 旅行アプリが、過去の検索履歴や季節トレンドに基づいて、ホテルやフライトのレコメンドをパーソナライズして届ける。
  • フィットネスアプリが、ユーザーの最近の活動状況や進捗に合わせたワークアウトメニューを提案する。

【主要なAIモデル】

  • Google Recommendations AI
    Googleショッピングでも使われているエンタープライズ向けのレコメンドシステム。パーソナライズされた商品提案に最適。
  • Amazon Personalize
    リアルタイムのユーザー行動を活用して、関連性の高いコンテンツや商品を提案するAIドリブンなレコメンデーションエンジン。
  • Meta AI
    ソーシャルおよびモバイルプラットフォーム上での動的広告ターゲティングやパーソナライズされたコンテンツの配信に使用される。
  •  Claude
    メッセージングフロー内で、ユーザーごとに特化したコンテンツ提案を生成できる自然言語処理(NLP)ベースのパーソナライズ技術。

成果を最大化するためのポイント

AIによるレコメンデーションとユーザー行動に基づくトリガーを組み合わせましょう。例えばユーザーがカートを放棄した場合、AIはそのユーザーが普段ブラウジングする最適なタイミングを見計らって、パーソナライズされた割引オファーでリマインドを送ることができます。

【2】AI搭載のチャット&音声アシスタント

ユーザーは、即時かつ常時対応のサポートを求めています。AI搭載のチャットボットや音声アシスタントを活用すれば、カスタマーサポートチームに過度な負担をかけることなく、それを実現できます。

AIによる会話型インターフェイスをアプリに統合することで、日常的な問い合わせへの対応、パーソナライズされた回答の提供、そして必要に応じた人間のオペレーターへのエスカレーションが可能になります。これにより、ユーザージャーニーの摩擦が大幅に軽減され、リテンション率の向上やアプリ内エンゲージメントの強化を期待できます。

【活用例】

  • 銀行アプリがチャットボットを使って、口座残高の確認、送金、詐欺警告への対応を行う。
  • 通信会社がAIアシスタントを活用し、接続不良などのトラブルシューティングをリアルタイムでサポートする。
  • 小売アプリが音声アシスタントを統合し、ハンズフリーでの買い物や注文状況の確認を可能にする。
  • 医療アプリがAIチャットボットを導入し、症状チェックや診察予約をサポートする。

【主要なAIモデル】

  •  ChatGPT
    人間らしい会話が可能なインテリジェントチャットボットを実現する生成AI。
  • Google Gemini
    音声検索やモバイルチャットボットソリューションとの統合が可能な高度なマルチモーダルAI。
  • Amazon Lex
    音声とテキストを用いた会話型インターフェイスをアプリに構築するためのAIサービス。
  • Azure AI Bot Service
    Microsoft製品や他社アプリと連携可能な、エンタープライズ向けのチャットボット開発用AI。

成果を最大化するためのポイント

一般的な問い合わせにはAIを活用し、複雑または高価値なやり取り(VIP顧客のサポートや請求に関するトラブルなど)については人間のオペレーターにエスカレーションします。これにより、コストパフォーマンスを上げながら、サービス品質を高いレベルで維持することが可能になります。

【3】予測AIによる最適なタイミングでのメッセージ配信

いくら巧みに作られたメッセージでも、タイミングが悪ければ効果は激減します。予測AIは、各ユーザーがエンゲージしやすい時間帯を分析することで、メッセージの配信タイミングを最適化し、開封率の向上と通知疲れの軽減を実現します。

特にプッシュ通知、SMS、アプリ内メッセージといった手法においては、タイミングがCTR(クリック率)やセッション時間といった成功指標に大きく影響するため、予測AIの活用が極めて重要です。

【活用例】

  • ゲームアプリがユーザーがプレイする傾向のある時間帯を特定し、そのタイミングに合わせて期間限定イベントの通知を送信。
  • フードデリバリーアプリがユーザーの過去の注文履歴に基づき、食事の注文が多い時間帯にプロモーションを配信。
  • ファイナンスアプリがユーザーが取引履歴を閲覧する時間帯に合わせて、支出の見直しを促すリマインダーを送信。
  • サブスクリプション型アプリが離脱したユーザーに対して、再訪可能性の高い時間帯を狙ってリマインド通知を配信。

【主要なAIモデル】

  •  Google Vertex AI Forecasting 
    ユーザー行動パターンを予測し、プッシュ通知の最適な配信タイミングを導き出すモデル。
  • AWS SageMaker Autopilot
    機械学習ベースで予測モデルを自動構築し、セグメンテーションやエンゲージメントのタイミング最適化に活用。
  • H2O.ai AutoMLmazon Lex
    マーケティングワークフローのための予測分析を自動化する、オープンソースのAIプラットフォーム。
  •  Meta Propensity Models
    広告配信最適化に使用されるモデルで、ユーザーの行動確率に基づきエンゲージメントのタイミング設計にも応用可能。

成果を最大化するためのポイント

アダプティブメッセージングを導入しましょう。配信時間を固定せず、ユーザーの行動パターンに基づいてAIが動的にタイミングを調整する仕組みに切り替えることで、効果を高めることができます。
さらに、AIによって生成された配信タイミングと、従来のスケジュール型キャンペーンをA/Bテストし、エンゲージメント率への影響を測定しましょう。

【4】AIによるマーケティングコピーの自動生成

魅力的でCVRの高いマーケティングメッセージの作成は、時間と労力を要する作業です。AI搭載のコピー生成ツールを活用すれば、過去のキャンペーン実績の分析、オーディエンスの感情理解、そして大量の魅力的なコンテンツの生成を効率的に行うことができます。

特に、プッシュ通知、メールマーケティング、SMSキャンペーンといった、簡潔さと明確さが求められる施策において非常に有用です。

【活用例】

  • 小売アプリがAIを使って複数のプロモーション用プッシュ通知を生成し、最もパフォーマンスの高いバリエーションを自動で選定。
  • ライドシェアアプリがユーザーの位置情報や乗車履歴に基づいて、AI生成のSMSメッセージを作成し、エンゲージメントを促進。
  • サブスクリプションサービスがメールの件名や本文をAIで動的にパーソナライズし、クリック率を向上。
  • ニュースアプリがトレンドトピックに基づいて、AIによって魅力的な見出しを自動生成。

【主要なAIモデル】

  • ChatGPT
    プッシュ通知、SMS、メール用の魅力的でパーソナライズされたマーケティングコピーを生成。
  • Claude
    文脈理解力が高く、ブランドトーンに合わせた繊細なコンテンツ生成に特化。
  • Jasper AI
    広告やメールなどのマーケティング用途に最適化されたAIコピーライティングプラットフォーム。
  •  Copy.ai
    プッシュ通知、メール、SNS投稿などに対応したテンプレート付きの自動コンテンツ作成ツール。

成果を最大化するためのポイント

AIコピー生成ツールに、過去のキャンペーンデータを学習させて精度と関連性を向上させましょう。AIによる提案は出発点として活用し、その後に人間のクリエイティビティで調整することで、ブランドと整合性の取れたメッセージングを実現できます。

【5 】モバイルアプリ開発の高速化におけるAI活用

AIの恩恵を受けているのはマーケティングチームだけではありません。開発者もAI搭載のコーディングアシスタントを活用することで、よりクリーンで効率的なコードを書き、エラーを減らし、モバイルアプリの開発スピードを加速させています。

これにより、機能の迅速なリリースが可能となり、マーケティングチームは長い開発サイクルを待つことなく、AIを活用した新しいエンゲージメント施策のテストを行えるようになります。

【活用例】

  • ショッピングアプリがAI支援のコーディングツールを使ってUI変更を迅速に実装し、新しい決済フローのA/Bテストを加速。
  • ゲームアプリがAIによるデバッグを活用してパフォーマンスのボトルネックを検出・修正。
  • ファイナンスアプリがリリース前にセキュリティ脆弱性をAIでコードスキャンすることで、コンプライアンスを確保。
  • ソーシャルメディアアプリがAI駆動の自動補完ツールを活用し、API統合を効率化。

【主要なAIモデル】

  • GitHub Copilot 
    開発者がモバイルアプリのコードを効率的に記述・最適化するためのAIコード補完ツール。
  • Google Gemini Code Assist
    Android Studioを含むGoogle開発環境に統合されたAIコーディングアシスタント。
  • Tabnine
    ソフトウェアエンジニアやモバイル開発者向けに特化したAI自動補完ツール。
  •  DeepCode
    セキュリティ脆弱性の検出やコード最適化を行う、モバイルアプリ開発向けのAIレビューエンジン。

成果を最大化するためのポイント

マーケティングチームと開発チームの連携を強化しましょう。AI搭載の開発ツールを活用することで、レコメンドエンジンやチャットボット統合など、エンゲージメントに関わる機能の実装を迅速化できます。マーケティング施策の仮説検証サイクルが短縮され、よりアジャイルなグロース戦略の実行が可能になります。

モバイルメッセージングへのAI導入の進め方

AIの導入を難しく考える必要はありません。重要なのは小さく始めて戦略的にスケールさせていくことです。メッセージのパーソナライズ、エンゲージメントタイミングの最適化、カスタマーサポートの自動化など、AIが定量的な成果をもたらす可能性のある高インパクト領域に焦点を当てましょう。

現在の業務フローにおける課題を特定し、AIソリューションで実験し、データに基づいてアプローチを改善することが出発点です。適切なロードマップを描けば、AIは業務効率の向上やエンゲージメントの強化を実現し、モバイルマーケティング戦略を“未来を約束するもの”へと進化させる強力な武器になります。

ステップ アクション
1. 課題を特定する AIが最も価値を発揮できる領域を見極めましょう。コンテンツのパーソナライズ、エンゲージメントのタイミング最適化、チャットサポートなどです。
2. 適切なツールを選定する OneSignal のような AI 対応のマーケティングプラットフォームを活用し、エンゲージメントの自動化を図りましょう。
3. 小さく始めて徐々にスケールする AIを活用したエンゲージメント施策を全体に展開する前に、パイロットテストを実施しましょう。
4. 計測と最適化を行う エンゲージメント、開封率、CVなどを追跡し、AIモデルを改善してメッセージのパフォーマンスを向上させましょう。

AIドリブンなモバイルエンゲージメントの未来

AIモデルが進化し続けるなか、AIによるインサイトを活用するマーケターは、より高いエンゲージメント、強固なリテンション、そしてROIの向上を実現するでしょう。今こそAIの活用に挑戦し、モバイルマーケティング戦略を変革する方法を見つけるタイミングです。

スケール可能な自動メッセージ配信に取り組む準備ができているなら、AI対応のメッセージングツールを活用することで、ユーザーの行動データに基づき、最適なタイミングでメッセージを配信することが可能です。

AIによるエンゲージメントはこれからの主流であり、適切なプラットフォームを選ぶことがその成否を左右します。積極的にチャレンジしてください。

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