この記事はMobileActionのHugh Kimura氏に寄稿していただきました。 動画を活用したマーケティングは効果的であるといわれており、近年人気が高まっています。
最近実施された調査によると、B2B企業の96%がマーケティングキャンペーンに動画を利用しています。また動画を利用した企業の73%が、満足なROIを得られたと報告しています。
しかし、ご存じの通り、アプリストアはその他のマーケティングプラットフォームとは異なる特性を持つプラットフォームです。そのアプリストアにおいても、動画は効果を発揮できるのでしょうか?
より具体的に言えば、Google Playストアでは、アプリのプロモーション動画がどのような重要性を持つのでしょうか?また、Google Playストア用動画の作成に、時間と資金を費やす価値はあるのでしょうか?
全てのアプリマーケティングに関して同じことが言えますが、動画の効果を期待できるかどうかは、アプリの種類とその時の状況次第で違ってきます。
しかしそれだけでは十分な解答とは言えないでしょう。そこで私は、Google Playストアでプロモーション動画がどのように効果を発揮するのかという点に注目し、いくつかの調査を実施することにしました。
プロモーション動画の効果を検証するためには、Google Playストアの各カテゴリで50位以内にランクインしているアプリの販売元に1件ずつ連絡を取り、動画がどのように機能したか尋ねることもひとつの手でしょう。しかしこの方法では、有意な結論を導き出せるだけの十分な情報が得られません。
そこで今回は、人気アプリの動向から、動画の効果を検証することにしました。 Google Playストアの各カテゴリにおいて、無料アプリランキング50位以内に入っているすべてのアプリを分析し、各アプリのプロモーション動画の有無と1日あたりの推定ダウンロード数を計算しました。
1日の推定ダウンロード数は、Apptaminのアルゴリズムを使って算出しました。このアルゴリズムでは、様々なソースで公開されているデータを取得し、それをもとにアプリが1日に獲得しているダウンロード数をほぼ正確に推測できます。
この情報があれば、プロモーション動画がどの程度の効果を生むのか明らかにできるはずです。もちろん、アプリのダウンロード数には様々な要因が影響していますが、ランキング上位に入っているアプリを対象とし、動画の使用状況を分析することにより、少なくとも現在どのような動画が効果的であり、どのような動画が効果的でないかを見極めるヒントを得ることができるでしょう。
無料アプリが動画から最も大きな影響を受ける可能性が高いと判断し、今回の調査では、無料アプリのランキングを対象としました。これは有料アプリの場合、ランキング上位のアプリには、無料アプリに比べ多額のマーケティング費用が投入されているため、有料キャンペーンの影響によるランキングの変動や、ダウンロード数の増加があると考えられるためです。
今回は調査結果を示すと共に、Google Play ストアで動画が最も多く使用されている5つのカテゴリについてはその詳細と、動画を使っているアプリが1日に獲得している推定ダウンロード数の平均値も紹介します。
さらにカテゴリ毎のベストプラクティスや、データに基づきアプリのプロモーション動画には投資する必要がないと判定したカテゴリについても掘り下げていきます。 このApptaminによる調査時と現在(2018年1月)ではトップ50にランクインしているアプリは異なる場合があるのでご注意ください。
過去のランキングを用いていますが、人気アプリのGoogle Play ストアにおける動画使用件数には現在とさほど大きな差はないはずです。
それではさっそく、調査結果を見ていきましょう。
無料アプリトップ50のプロモーション動画利用状況
まずはカテゴリ毎のプロモーション動画利用状況を見てみましょう。
グラフからわかるように、動画を使用しているアプリの割合は全体的にかなり低くなっています。50位以内にランクインしたすべてのアプリのうち、プロモーション動画を作成しているアプリは平均24% でした。
GoogleはAppleよりもかなり前からアプリストアにプロモーション動画を導入しています。しかし動画の使用率は100%には遥かに及ばない結果となっています。全アプリの76%がまだ動画を用意していないということは、クオリティの高いプロモーション動画を作成する技術があるなら、それを試してみる価値は十分にあるかもしれません。
動画があれば、他のアプリより目立つことができます。
Google Play ストアで動画の使用率が最も高いカテゴリは、以下の4つです。 すべてのカテゴリ
ここから先は、これらのカテゴリをさらに詳しく見ていきますが、その前に、ゲームについてはどうでしょうか?
この点についてもぜひお話しておきたいと思います。 下のグラフは、ゲームのカテゴリ毎に、無料ゲーム上位50件のプロモーション動画利用状況を示したものです。
ゲームの場合、プロモーション動画の平均使用率は43%と、その他のカテゴリのほぼ倍という結果となりました。そもそもゲームは、他のアプリよりもかなり多くの収益をあげることができる傾向にあります。そのためプロモーション動画のおかげでランキング上位に入れたと考えることもできますが、ランクインした企業がマーケティング費用を他社より多く用意できているだけという可能性も考えられます。
いずれにしても、動画の使用率が高いカテゴリに属するゲームを開発したという場合には、競合ゲームの多くが動画を活用している可能性があるため、動画を作成してみるべきでしょう。
無料アプリ上位50件のうちどれくらいのアプリが動画を使用しているかわかったところで、ゲームを含め動画使用率の高い5つのカテゴリを詳しく見ていきながら、各カテゴリでどのようにプロモーション動画を利用しているのかチェックしてみましょう。
さらに動画を使っているアプリと使っていないアプリを比較し、それぞれが1日にだいたい
何件くらいのダウンロード数を獲得しているのか紹介します。
総合ランキング
今回の調査では、無料アプリ総合ランキングで50位以内にランクインしたアプリのうち、36%がプロモーション動画を利用していることがわかりました。「仕事効率化」、「天気」カテゴリの動画使用率と並ぶ結果です。
無料アプリ総合ランキングトップ50のうち64%が動画を使用していません。では実際のところ、これらのアプリのコンバージョン率が、プロモーション動画の影響で伸び悩んでいるということはあり得るのでしょうか。そこでここからは、各カテゴリをアルファベット順で見ていきながら、動画の有無と1日あたりの推定ダウンロード数に因果関係があるかどうか、ひとつずつ確認していきます。
ビジネス
「ビジネス」カテゴリは、無料アプリにプロモーション動画が最も多く使用されているカテゴリのひとつです。ランクインしているアプリを一通り調べてみましたが、「ビジネス」カテゴリの中でも特にどの分野のアプリが動画を多く利用しているといった規則性は見つかりませんでした。
「ビジネス」カテゴリの場合、無料アプリトップ50には、特に以下の分野のアプリが多く見られました。
- 求職アプリ
- 事務用アプリ (PDF作成、スキャン、ファックス、文書作成アプリ)
- ビジネス用コミュニケーションアプリ (Slack、Skypeなど)
「ビジネス」カテゴリで50位以内にランクインし、動画を使っているアプリの1日あたりのダウンロード数を平均すると、およそ1,593件でした。これに対し、動画がないアプリの1日あたりのダウンロード数は、約1,355件となりました。
考察
「ビジネス」カテゴリでは、大きく分けて2種類のプロモーション動画が使用されています。その1つ目が、シンプルな背景にスマートフォンやモバイル端末だけを表示するタイプの動画です。
この種類の動画は、『ZipRecruiter』や『Fiverr』、『ポラリスオフィス』といったアプリが採用しています。下の画像は、『Fiverr』の動画のスクリーンショットです。
そして「ビジネス」カテゴリに多く見られるもう1種類の動画が、人物を登場させた実写動画です。『Loyverse POS レジ』の動画が良いお手本となります。
「ビジネス」カテゴリに属するアプリの動画を作成したいなら、ここで紹介した2種類のフォーマットを参考にするところから始めるのが良いでしょう。
Apptaminの調査結果から、「ビジネス」カテゴリで実践すべき戦略がもうひとつ見つかりました。それは (YouTube動画のサムネイルを変更し、) デスクトップ用のサムネイル画面に、ユーザーからの声を表示することです。
画像は『ZipRecruiter』の例です。
モバイル端末の場合には、宣伝用画像のテストと最適化を実施しましょう。
ゲーム
ゲームの動画使用率が比較的高いとは言え、どのカテゴリのゲームでも動画がたくさん使用されている訳ではありません。「ボード」と「雑学」カテゴリにおける動画使用率が最も低く、「アーケード」と「頭脳系」カテゴリのゲームに動画が最も多く使用されています。
そこで「アーケード」カテゴリに注目し、動画のあるアプリとないアプリを比較したところ、顕著な違いがあることがわかりました。プロモーション動画を用意してあるアプリは、1日あたりほぼ3倍の推定ダウンロード数を獲得していたのです。
考察
ゲームのプロモーション動画は、ゲーム内の動作が多いカテゴリや、ゲームの操作が複雑なカテゴリにおいて効果を発揮するようです。さらに、エキサイティングな音楽を使うと最も効果的です。
仕事効率化
プロモーション動画を比較的多く採用している4つ目のカテゴリは、「仕事効率化」カテゴリです。このカテゴリでは、「Google」、「Microsoft」、「AT&T」といった大企業のアプリが上位を占めています。
このような大企業がマーケティングに割ける予算を考えれば、「仕事効率化」カテゴリの大半のアプリが動画を用意していると思うかもしれません。しかしそうとも言い切れないのです。
仕事効率化アプリでは36%しか動画を使用していませんでした。「Microsoft」の 『OneNote』でさえスクリーンショットしか作成していません。
この理由としては、先に挙げたような大企業はすでに十分な知名度を得ており、その絶大なブランド力があればアプリをダウンロードしてもらえるため、Google Play ストアのアプリ詳細ページを最適化する必要性を感じていないということが考えられます。
しかし動画を用意しているアプリのダウンロード数を見てみると、プロモーション動画を使用することで、わずかではありますが効果が得られるようです。
考察
データを分析した結果、アプリが「仕事効率化」カテゴリに属する場合には2つのことをおすすめできます。まず、このカテゴリには有名ブランドのアプリがたくさん登録されているため、できることなら自分のアプリを他のカテゴリに移動することを検討してもいいでしょう。
次に、「仕事効率化」カテゴリから変更しない場合には、動画を利用することでわずかながら効果を期待できます。このカテゴリでは、大企業であってもアプリ用の動画をまったく作成してことがあるため、動画が表示されるアプリは目立つ存在になるでしょう。
「仕事効率化」カテゴリには、モバイル端末を表示し、アプリの機能を見せるといったシンプルかつ洗練された動画を作成するのが最適です。「Microsoft」のアプリ『Cortana』の例を見てみましょう。
天気
このカテゴリについては、興味深い結果が得られています。
天気アプリは、一目見ただけでわかりやすいアプリが多いです。
データを調べたところ、無料アプリトップ50のうち動画を用意しているアプリは、1日に倍以上のダウンロード数を獲得していることがわかりました。
これはかなり大きな違いです。推定ダウンロード数をもとに検討すると、「天気」カテゴリではプロモーション動画が非常に大きな効果を発揮するようです。
考察
天気アプリの動画には、いくつかの共通点を見つけることができました。まず、背景には美しい天気の映像が使用されています。モバイル端末のみを表示する動画であっても背景は同じです。
画像は『NOAA』のアプリに使用している動画の例です。
特に注目すべきもうひとつの共通点は、アナウンサーがアプリの使用方法や利用可能な機能を説明しているという点です。
『MyRadar Weather Radar』もプロモーション動画にアナウンサーを起用しています。この動画の場合、説明がやや長いために見る人が退屈してしまうかもしれません。しかしこれを参考にするのであれば、説明を短くまとめ、画像のクオリティを高めることでとても効果的な動画となるでしょう。
天気アプリの動画では、音楽の重要度はあまり高くありません。心地よく、邪魔にならない程度の音楽を選びましょう。
無料天気アプリを対象とし、動画があるアプリとないアプリのダウンロード数を比較した結果から、動画を作成すれば効果が得られると言えそうです。自分のアプリが「天気」カテゴリに属するのであれば、必ず動画を試しましょう。
Google Play ストアで動画の使用率が最も低いカテゴリ
ここまで紹介した例を見てみると、どのアプリにも動画を用意しておくべきだと思うかもしれませんが、そうとは限りません。
動画の使用率が最も低いカテゴリを把握しておくことも重要です。そうすれば、動画を作成しても時間の無駄になってしまうカテゴリがわかります。
我々の調査では、「ライブラリ&デモ」カテゴリの無料アプリで、動画の使用率が最も低いという結果が出ました。
「ライブラリ&デモ」カテゴリのアプリには、プロモーション動画の効果がないから、使用率が低いのでしょうか?それとも他に理由があるのでしょうか?見ていきましょう。
今回の調査で、動画を作成しているアプリと作成していないアプリの、1日あたりの推定ダウンロード数を分析したところ、以下のような結果が得られました。
実際のところ、プロモーション動画のないアプリの方が、1日の推定ダウンロード数がやや多くなっていますが、それほど大きな差はありません。しかしグラフからわかるように、「ライブラリ&デモ」カテゴリの上位にランクインしたアプリは、そもそもダウンロード数が多い訳ではありません。
このカテゴリに属するアプリの大半が動画を作成していない理由は、おそらくここにあります。ライブラリ&デモアプリはダウンロード数が少ないため、動画の作成に必要な時間とコストに見合った収益をあげていないのです。
アプリが動画使用率の低いカテゴリに属する場合には、必ず自分で調査を実施し、プロモーション動画に投資する価値があるのか見極めてください。
結論
結局のところ、動画はASOの一要素に過ぎません。しかし今回の調査で明らかになった通り、競争の激しい人気カテゴリで上位にランクインするアプリは、動画を利用しています。
そしてダウンロード数を推定してみると、動画のないアプリよりも、動画のあるアプリの方が、ダウンロード数が多いということが判明しました。 自分のアプリが今回紹介したカテゴリに属している場合には、プロモーション動画を試してみる価値があると思います。
Googleが提供しているアプリストア掲載情報のテスト機能を活用し、作成した動画をテストして、スクリーンショットや他のバージョンの動画と比較することも忘れないようにしましょう。
しかし、アプリが動画使用率の極めて低いカテゴリに属している場合には、スクリーンショットだけで十分という可能性もあるので注意しましょう。
この記事は、apptamin社のブログ"5 Google Play Categories Where Apps With Promo Videos Get More Downloads"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on apptamin in English under the permission from the author.