ミレニアル世代は年間2兆ドルもの購買力があり、アメリカの人口の約4分の1を占めていることから、小売事業者にとってミレニアル世代がいかに重要な存在なのか簡単に見て取れます。今や多くの小売事業者が収益増加を狙って、ミレニアル世代との関係性構築に努めているのです。
大手のブランドはすでに顧客セグメントに合わせた戦略へとシフトし、ミレニアル世代の顧客獲得とロイヤリティの向上を高めるための手を打っています。例えば、顧客基盤の60%が50歳以上であるQVCは、顧客基盤の64%が50歳以下であるZulilyを買収しました。
また、NordstormはTruck ClubとHauteLookの両方を買収しました。どちらもミレニアル世代の市場において台頭しているスタートアップ企業です。
モバイルはミレニアル世代をターゲットするにあたって恰好の場所を提供しています。モバイルコマースが徐々に当たり前となってきたことや、モバイル上のWebサイトの限界が見えてきたことから、多くの小売事業者はネイティブアプリの開発に踏み切るようになってきました。アプリを開発することの大きなメリットはスマートフォンにおいてパーソナライズされた購買体験を提供できることです。
Forbesに掲載されたKyle Wongの調査によると、それこそがミレニアル世代の興味を引きつける何かであると言います。 上記の調査によると
- ミレニアル世代の約半分がスマートフォンでショッピングアプリをダウンロードしている
- 小売アプリをダウンロードしている理由の54%はモバイル上のWebサイトに比べアプリの方が使い勝手がいいから
- 実店舗の27%は特別なオファーやディスカウントを提供するためにアプリを活用している
ミレニアル世代においてどのショピングアプリがもっとも人気があるのか?Kyle Wongによって書かれたForbesの記事
しかし、どんな場合にもうまくいく解決策などなく、ブランドは各自の目的に応じたアプリの活用方法を見つけ出す必要があることもまた事実です。小売事業者がアプリをつかってミレニアル世代にリーチする方法は多岐にわたっています。
ブランドロイヤリティと親和性を確立させる
ミレニアル世代はその他の世代に比べると、よりライフスタイルとしてモノを消費しています(行動や、ブランドとの関係性を消費することは、自分のアイデンティティやライフスタイルと密接につながっている)。これは一見すると、ミレニアル世代とは簡単にブランドロイヤリティや親和性を構築できるかのように見えますが、実際にはそう簡単には行きません。
小売デザイン会社のShikatani Lacroixの調査によると、
- ミレニアル世代は体験によって心を動かされやすく、夢中になれる、インタラクティブな体験に価値をおいている
- ミレニアル世代の48%は面白い体験を提供しているブランドによりロイヤリティを感じている
- ミレニアル世代の42%はブランド・ストーリーに関わっていると感じられるような体験を好んでる
- ミレニアル世代の47%は実際の商品よりもブランドが提供する体験に価値をおいている
ミレニアル世代のブランドエンゲージメントの将来予測
したがって、アプリを活用してミレニアル世代の顧客を獲得しようとしている小売事業者は、彼らが求める体験を作ることにまずはフォーカスするべきです。
パーソナライゼーション
モバイルのパーソナライゼーションはミレニアル世代がアプリに求めるユーザー体験を作りだす上で欠かせません。パーソナライゼーションはブランドロイヤリティ、アプリの利用頻度、そしてミレニアル世代の注目を獲得し、彼らを巻き込む体験を提供する上で鍵となります。ミレニアル世代は直感的であるだけでなく、彼らと関係のある体験を求めているのです。
小売事業者はこういった体験をミレニアル世代に提供するために様々な指標やビッグデータ、アナリティクスツールを活用しています。消費者行動の予測モデルやユーザーがどういった好みを持ち、行動をするのかといったデータは、プッシュ通知のパーソナライズやオススメ機能の高精度化、非常にパーソナルなレベルで消費者に関与していく上で役立つのです。成功している小売アプリはこういったデータをうまく活用してミレニアル世代に対し一人一人に合わせた体験を提供しています。
実店舗での顧客体験
オンラインやモバイルチャネルの人気が上昇してる一方で、小売ビジネスの90%以上は未だに実店舗からの顧客に支えられています。ミレニアル世代はリアル店舗での体験も求めていますが、さらに店舗販売で従来提供されていたもの以上の体験を求めているのです。そしてさらに重要なのは、彼らはモバイル体験とシームレスにつなぐような実店舗での体験を求めているのです。
リアル店舗での体験を向上させるテクノロジーの一つとして期待されているのがビーコンです。ミレニアル世代の中でも特に女性は、他の世代に比べてビーコンを活用しているアプリを好んで使っています。ビーコンは場所や状況に応じて顧客にメッセージを発信することができ、かつてないほどにリアル店舗でのショッピングをパーソナライズすることができます。それにより、ビーコンはミレニアル世代が求めている体験を作り出すことがいかに重要か証明してくれるでしょう。
価値と利便性をプラスする
ミレニアル世代は彼らの購買体験の中に価値と利便性の両方を提供するようなアプリを求めています。これはどの世代にとっても当然のことですが、ミレニアル世代が「体験」を重視していることを考えると、特にミレニアル世代に対してこういったアプリを提供することは重要だと言えるでしょう。
アプリを通して価値や利便性を提供する方法はいろんなやり方がありますが、俯瞰すると、購入までの道のりで障壁となっているものを取り除くということが含まれます。例えば、パーソナライゼーションを活用して顧客一人一人に合わせた体験を作り出したり、アプリ専用の特典を提供するなどです。
アプリ内でクーポン検索や購入、店舗内検索ができる機能というのはミレニアル世代の消費者と小売事業者との関係性を強めてくれることが明らかになってきています。これらの機能に共通することは、アプリ以外のチャネルではできないような、ある一定レベルの価値や利便性をプラスしているということです。
シームレスなオムニチャネル体験
すでに述べたように、ミレニアル世代は体験を非常に重視していますが、単にモバイルだけというわけではありません。ブランドと顧客とのすべてのタッチポイントにおいてシームレスな体験を期待しています。それはつまり、小売事業者はチャネルを横断した一貫性のある購買体験を提供する必要があるということです。ブランドやバリュープロポジション、機能性において、モバイル体験は実店舗とオンラインを統合する存在でなければいけません。
小売業者がミレニアル世代との関わりを深めていったことによって、アプリは店の窓口の役割も、店舗内でユーザーを助ける役割も担うようになりました。以下の事例はこのプロセスをよく表しています。
- ユーザーがアプリ内で商品を検索する
- アプリが商品の在庫数だけでなくユーザーに関連のある、ローカルのお得情報をお知らせする(オンラインと店舗内において)
- リアル店舗に来たユーザーが、アプリで新しく商品検索をした際にアプリがユーザーの求める商品が置いてある場所をマップで教えてくれる
上記は数あるシナリオの一つでしかありませんが、アプリはオンラインとオフラインをつないだ体験も提供することができます。例えば、アプリで注文したものを店舗で受け取とるといったチャネルを横断した購買体験などです。最終的に目指すゴールは、購入プロセスに関係なく、顧客が簡単に購入まで完了させることです。これはミレニアル世代が小売業者に対し求めている特徴的になります。
ミレニアル世代を惹きつけるためにモバイルを活用する
ミレニアル世代に対し顧客セグメント戦略を打っている小売事業者にとって、アプリは重要な存在です。ミレニアル世代はよりショッピングアプリを利用していますし、一層ブランドとのつながりを求めています。したがって、小売事業者は、ミレニアル世代が最も価値をおいている購買体験の向上に取り組むためのモバイル戦略に注力する必要があるのです。
この記事は、 clearbridgemobile上の記事 " how retail apps are attracting the millennial shopper"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on clearbridgemobilein English under the permission from the author.