2020.04.14
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響は各業界に広まっています。企業は自社が受ける影響を鑑み、状況に応じたマーケティング施策を打ち出していくことが求められますが、その際に参考となるのが日本よりも先に影響を受けて、対策を進めている海外での事例です。
そこで本稿では、海外におけるコロナショックによる影響とオンラインでのコミュニケーション施策に留まらない中長期を見据えたマーケティング事例をお伝えします。
カリフォルニア発の13店舗を展開するカジュアルウェアブランド「Aviator Nation」は、リテール事業のオンライン販売比率が70%となっています。そのため、ロサンゼルスの全店舗および工場が閉鎖されている状態でも、EC販売は安定しているとのこと。
そして、同社は屋内退避命令が出ると同時に自社サイト上での24時間限定セールを実施しています。セールでは売上金がすべて従業員に支払われることを一斉配信メールで顧客に伝えており、売り上げは従業員の1カ月分の給料を支払える金額にまで達しています。
「Lively」は普段、春先は水着が人気商品ですが、今年の3月からは部屋着の売り上げが200%増加。同社は、コロナショックを受けて着心地の良さを重視したラインナップに切り替えており、供給が滞らないように販売パートナーへの流通強化を実施しています。
現在は自社サイトのトップ画面で人気が出ている部屋着類を訴求しており、購入すると無料特典としてシュシュをつけるキャンペーンも開始。また、公式Instagramの投稿数を増やすなどSNSによる拡散施策も実施しています。
イギリスのセレクトショップである「In the mood」は来店のない店舗を利用して、公式Instagramにてオンラインファッションショーを配信しています。同社は配信や投稿において、各アイテムの説明やコーディネートの提案を行い、サイズ展開や値段も詳細に伝えています。
加えて、来店の少ない店舗や営業休止店舗の従業員リソースをEC運営に充てており、公式Instagram上で購入連絡や問い合わせがしやすい基盤づくりに注力しています。
ファッションECサイト「ASOS」は、リモートワーカーの増加を受けて、音楽ストリーミングサービス「Spotify」にて、在宅ワーク向けのプレイリストを公開しています。加えて、公式Instagramのストーリー投稿でもプレイリストを紹介しています。
画像元:Spotify
また、この取り組みに対して競合サービスの「Boohoo」も同じようにプレイリストを公開しています。特に「Boohoo」の場合は、公式Instagram上でリモートワーク向けのコーディネートを紹介し、自社ECサイトへの誘導施策を実施しています。
こちらの記事でも言及しましたが、「NIKE」は中国市場において75%の店舗が休業もしくは営業時間短縮を余儀なくされている状況においてもオンライン販売が30%増加しており、売上全体の底上げを実現しています。
またECシフトに向けて、25%OFFクーポンをウェブサイトで発行するなど、オンラインシフトを進めています。
「Estée Lauder」は、マスク着用によって発生する肌荒れに着目し、自宅で可能なスキンケア対策を公式Instagram上で発信しています。
「ALIBABA」は、マスク着用時のメイク方法に着目。サージカルマスクを着用した状態でのメイク方法をライブ配信することで、約820万人の視聴者を集め、配信で扱ったアイテムの売上を前月比150%増加させることに成功しています。
画像元:ALIBABA
コロナショックによって破産寸前の状態に陥った「林清軒」は、社長が自らライブストリーミング配信を実施することで窮地を脱しています。同配信は約6万人の視聴者を集めており、販売額は40万元(約590万円)を叩き出し、同社の2020年2月の売上高は対前年比で45%増加。
画像元:ALIBABA
40%以上の店舗が閉鎖、武漢においては全店舗閉鎖の状況だからこそ、100名近くの閉鎖店舗の美容部員をオンライン上のインフルエンサーとして活動させ、特に「Wechat」の活用にリソースを転換する方針を打ち出しました。通常の店舗来店を促す活用から、トークルームなどで商品購買を促す活用が功を奏し、武漢における売り上げは昨年同期の約3倍にまで増加しています。
「Forest Cabin」は実店舗の約50%が一時的に閉鎖した状況において、「Taobao Live」におけるコンテンツ配信に注力し、1600名の販売員にトレーニングを実施。従来のオンラインの売上比率は25%でしたが、コンテンツ配信に注力した結果として現在は90%を占めるまでにEC活用が普及しています。
アメリカのグローサリーストアである「Fairway Market」は、2019年からレジ会計の手間をなくすセルフチェックアウト機能が実装されたアプリをリリースしています。これまではアプリの活用がうまく進んでいませんでしたが、コロナショックを受けて利用者が急増。
画像元:Fairway Market(公式Instagram)
行列を解消するための取り組みのひとつとして、食品の備蓄を目的として来店する顧客向けに公式Instagramでアプリの宣伝および使い方を紹介する動画コンテンツを提供することで、アプリ利用を促進しています。
同社傘下の企業は老舗レストランなどの飲食店舗を幅広く展開していますが、コロナショックを受けて店舗に可能な限り来店客が滞在しないように、遠隔予約サービスを導入しています。自宅でスマートフォンからQRコードを読み取ることで料理をオーダーし、オンライン決済を事前に済ませて指定時間に店舗に向かうことで、ほぼ滞在時間なく料理を受け取れる仕組みを実現しています。
また、自宅から外出できない場合には、配送サービスの利用も可能となっており、多くの店舗で売上改善につながっています。加えて、注文ごとに料理の安全性を示す情報が記載されており、調理プロセスにおける食品の安全性に関する情報も記載するなど、ユーザーに寄り添ったサービス提供の工夫が進められています。
カリフォルニア州にあるグローサリーストア「EREWHON」では、年配客や身体が不自由な顧客向けの取り組みを開始しています。備蓄需要による来店顧客の増加、social distanceへの配慮の影響を受けて、ユーザーの「年配の来店顧客が買い物しづらそうだった」という声から始まった取り組みであり、対象者限定で通常開店の1時間前に来店してもらい、ゆっくりと買い物が出来るというアイデアをすぐに実践しています。
この取り組みは続々と広がっており、多くのグローサリーストアにおいて買い物時間の設定が当たり前になりつつあります。
また、同業界におけるオンライン上での購買需要が高まっており、「Apptopia」のデータによれば2020年3月15日時点のアプリダウンロード数は、前月と比較して「Walmart Grocery」は約160%増、「Instacart 」では約218%増と、オンラインシフトが加速しています。
「康師傅」は消費者の買いだめおよび備蓄需要を想定し、大規模店舗での販売強化ではなく、ECやO2Oの活用および地域密着型の小規模店舗での販売注力の方針を打ち出しました。
加えて、同社は細かく小規模店舗の閉鎖および再開予定状況をチェックし、柔軟な商品流通を担保していました。その結果として、数週間でサプライチェーンの約50%が回復し、競合企業と比較して約3倍もの商品の安定供給を実現しています。
フィットネスアプリ「Keep」は、コロナによる自粛を受けて、有料動画コンテンツを無償で公開しています。
画像元:Keep
コロナショックによる運動不足への懸念が危惧されるなかで、社会貢献を果たしたいということから無償提供に踏み切っていますが、結果としてSNSによる拡散で認知を大きく獲得し、サービスへのアクセスも順調に増加してます。
ヨガクラスを提供する「SKY TING」は、公式Instagramのストーリー機能を活用したライブ配信を早期からスタート。同社のオフィシャルサイトや「Vimeo」を活用したオンライン配信に加えて、配信スケジュールを公開したり、見逃し配信コンテンツを提供することで公式Instagramへの誘導を強めています。
この取り組みは同社だけではなく、ヨガ・ブティックジム業界では、SNSでのライブ配信を活用し、毎日複数回の無料レッスンの配信を通して顧客とのコミュニケーションを取り、お互いを励まし合うメッセージのやりとりを通して顧客とのエンゲージメントを深める取り組みに続々と着手しています。
現代自動車は、顧客が失業した場合において、顧客の信用を損ねることなく返品出来るという大規模なプロモーション施策を打ち出しています。過去に同社が実施していたキャンペーンをコロナショックの影響を考慮し、復活させた形で実現した取り組みです。加えて、新車発表会もオンライン中継で配信するなど、非対面を前提とした販売方法にも注力しています。
画像元:東亜日報
これらの取り組みは世界的に自動車販売台数が急減している状況において、早期にコロナショックの影響を抜け出しつつある中国市場にフォーカスした販売戦略だと考えられます。
中国の新車販売台数は2月は前年比で約79%落ち込みましたが、同社の3月の販売減少幅は前年比で約28%に踏みとどまっています。世界的に販売台数がダウントレンドにある中で唯一の希望となる中国市場において、市場動向を先取りした販売戦略となっています。
アメリカに本拠地を置く「Sensor Tower」の報告によると、Niantic社が提供する「Pokémon GO」は屋内における歩数もカウントする機能を実装することで、ロックダウン下においてもグローバルにおける2020年の収益記録を更新したと発表されました。
画像元:Pokémon GO
特定の場所まで向かわなくてもイベントスポットを利用出来る機能やソーシャル機能を強化することで、アプリダウンロード数を伸ばし、3月16日週の総売上高は約2,300万ドルとなり、前週と比較して約67%の成長。これは2020年における総収益の約13%を占め、売り上げにおけるアメリカの比率が34%であることも発表されています。
この実績を受けて、同じく同社が提供する「Ingress」や「Harry Potter:Wizards Unite」においても、少ない歩数でも楽しめるように仕様変更を実施し、アプリ内アイテムのディスカウントを行うなどの施策を推進しています。
「Google Map」では、ユーザーがテイクアウトやデリバリーに対応している店舗をすぐに見つけられるように、「テイクアウト」および「デリバリー」のタップアイコンがアメリカ版サービスにおいて追加実装されています。
同機能はアイコンをタップするだけで簡単に対応店舗が見つけられるようになっており、ユーザーニーズを捉えたプロダクト改善として各地域版のサービスにも順次実装が開始されています。
画像元:Google Map
コロナショックを受けた飲食店が業務形態の変更を余儀なくされる状況下において、すぐに変更したことが伝えることが出来る基盤として、飲食店からのエンゲージメントを高めることに一役買っています。
本稿では、各業界におけるコロナの影響を加味したマーケティング施策の実例をご紹介してきました。その中でも、コロナショックを受けて上手く戦略を切り替え、マーケティング施策を素早く実施している企業には以下の共通点がありました。
① コロナの影響を考慮し、ユーザーの変化するニーズに対応するキャンペーンの実施
② 目の前の利益ではなく、ユーザーからのエンゲージメント向上を意識
③ オンラインシフトは当たり前として、デジタル領域に投資
この3つの共通項からいえるのが、コロナショックによって企業としての在り方やユーザー行動が変化している今だからこそ、マーケティング施策を改めて見直し、生き残りをかけた企業のデジタル改革が求められているということです。
それでは企業は何から取り組むべきでしょうか?
まず考えられるのが、少ない投資でも実施可能なSNSなどを活用したオンラインコミュニケーション施策です。多くの企業がSNSやアプリを活用したデジタル施策を推進しており、ユーザーとの接点を保つための工夫を凝らしています。
そして、企業はアフターコロナを見据えて、オンラインシフトを前提としたデジタル基盤を構築することが中長期的に求められます。デジタルが当たり前になる世の中において、顧客とのエンゲージメントを構築していくためには、デジタルを活用したコミュニケーションやマーケティング施策が必要不可欠となります。
日本よりもデジタル活用が進む海外事例を参考に、これからのマーケティング戦略を再考することが必要なのではないでしょうか
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