OMOとは?図解と7つの事例で完全理解!最新マーケティング戦略の意味と進め方、O2Oやオムニチャネルとの違い

山﨑 信潔
山﨑 信潔
2023.07.04
OMOとは?図解と7つの事例で完全理解!最新マーケティング戦略の意味と進め方、O2Oやオムニチャネルとの違い

目次

消費・購買行動のオンライン化により、近年、注目を集めているのが「OMO」という言葉です。しかし、OMOという言葉に含まれる文脈や実現に向けた施策は、非常に複雑であり、すぐに理解・実践しがたいものでもあります。
本ページは、OMOの言葉の意味や本質を図や事例を用いながらわかりやすく説明し、OMOの実現に向けた第一歩を踏み出せるようにすることを目的として制作されています。OMO推進のために必要な要素も詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

OMOとは?言葉の意味と概念を理解する

OMOとは、「オンラインとオフラインを融合して、より良い顧客体験を目指すマーケティング戦略」、もしくは「顧客がオンライン・オフラインを意識することなく一貫したサービス・体験を得られる状態」を指す言葉です。

「Online Merges with Offline」の略語で、直訳すると「オンラインとオフラインの統合・融合」を意味しています。

アパレル企業を例に考えてみましょう。下の図の通り、OMOが確立していない場合、オンライン・オフラインで受けられるサービスが個別に設計され、顧客はそれぞれの体験を個別に認識し、メリットに合わせて使い分ける必要があります。

「商品に直に触れて質感やサイズを確かめたい」「店舗のスタッフからおすすめのコーディネートを聞きたい」ときなどには、オフライン(店舗)のサービスを利用する。「自宅で今すぐに購入したい」「たくさんの商品を閲覧したい」「データを基におすすめ商品をレコメンドしてほしい」といった場合は、オンライン(ECサイト・アプリ)のサービスを利用するという形です。

■OMOが確立していない状況

OMOが確立していない状況をわかりやすく説明した図OMOが確立していない環境では、顧客はオフラインのサービス、オンラインのサービスを別のものとして認識し、利用している。

一方、OMOが確立している場合、顧客はオンラインとオフラインを意識することなく、一貫したサービスと体験を得られるようになります。オンライン・オフラインのメリットが損なわれることなく、両者が密に連携してサービスが提供されると言い換えてもいいかもしれません。

例えば、「自宅でECサイトを通じて、店舗スタッフからコーディネートの提案を受けられる」「店舗で触れた商品をそのままアプリで購入し、帰宅するころには自宅に届いている」といった体験をイメージするとわかりやすいでしょう。

■OMOが確立している状況

OMOが確立している状況をわかりやすく説明した図OMOが実現すると、企業が提供するあらゆるチャネルで一貫したサービスや商品が提供され、顧客はオンライン・オフラインを意識せずに利用できる。

OMOを理解するうえで最も重要なのは、主体が顧客であるということです。例として「自宅でECサイトを通じて、店舗スタッフからコーディネートの提案を受けられる」という状況を挙げましたが、顧客が「結局のところオンラインのサービスであり、店舗にも行かなければならない」と感じているなら、それはOMOが確立しているとはいえません。

逆にいえば、顧客がオンライン・オンラインのサービスをシームレスに利用し、一貫した体験を得ているのであれば、それはOMOが確立した状態といえます。OMOは個別の施策ではなく、「サービスやブランドを顧客にどのように認識してもらうか」という戦略を軸に推進すべきものなのです。

7つの国内・海外事例でOMOの本質を理解する

OMOをより深く理解するためには、すでに先行している企業の事例を見るのが一番の近道です。OMOを実現する手法は無限にあるため、「OMOを推進するぞ」とむやみに意気込んでも、いったい何が自社にとってのOMOなのかがわからなくなってしまいがちだからです。ここではOMOを推進・支援している7社の例を紹介しましょう。自社が実現すべきOMOのヒントがきっと見つかるはずです。

【事例1】日本マクドナルド株式会社「モバイルオーダー」

日本で最も有名なOMO事例のひとつが、日本マクドナルドが実現した「モバイルオーダー」による顧客体験です。仕組み自体は、商品の注文をモバイルアプリから行い、受け取りは店舗でという非常にシンプルもの。

しかし、オンライン注文と店舗受け取りという顧客の行動をシームレスに融合させたことで、「店舗に行く前に商品をじっくりと選べる」「注文時の行列に並ばなくて済む」、さらには「テーブルに届けてもらえる」「駐車場でも受け取れる」などの新しい飲食体験が成立しています。スピーディに自由なスタイルで飲食できるというファストフードの特徴をより進化させたOMO事例といえるでしょう。

日本マクドナルド株式会社「モバイルオーダー」※画像引用:プレスリリース
「モバイルオーダー」の詳細を見る

【事例2】青山商事株式会社「スーツスクエア」

2023年5月に発表された、青山商事株式会社の「スーツスクエア」はアパレル業界におけるOMOの先進事例といえます。「DIGI-lab」という名前のシステムを採用し、在庫はオンラインショップと連携。店頭にない商品も含めて購入の選択肢となります。もちろん、カウンセリングや採寸といった店舗ならではのサポートも受けられ、購入後の商品を自宅に無料配送してもらうことも可能です。

「ネットで見つけた商品が店舗になかった」「サイズ感や素材感がわからないまま購入するのは不安」といった、オンライン・オフラインそれぞれにおける顧客の悩みを、OMOによって一挙に解決ししたとても参考になる事例といえるでしょう。オンラインショップの商品を最寄りの店舗に取り寄せて試着できる「TAP&FIT」にも対応しています。

青山商事株式会社「スーツスクエア」※画像引用:青山商事株式会社のプレスリリース
「スーツスクエア」の詳細を見る

【事例3】株式会社アイスタイル「@cosme TOKYO」

2020年にオープンした「@cosme TOKYO」は、日本最大のコスメ・美容の総合サイト「@cosme」のリアル店舗です。最大の特徴はプチプラコスメから、ラグジュアリーブランドまでが一堂に会している点。@cosmeがオンライン上で実現している、口コミ・レビューによるユーザー視点での商品選びを、オフラインにも再現しているのです。

「@cosmeベストコスメアワード」受賞アイテムや、サイト上での人気アイテムが陳列されているコーナーがあり、統一された世界観をオンラインでもオフラインでも体験できる設計になっています。サンプル商品とQRコードを紐づけて、顧客情報を収集し、オンラインのコミュニケーションに還元する取り組みも。

株式会社アイスタイル「@cosme TOKYO」※画像引用:株式会社アイスタイルのプレスリリース
「@cosme TOKYO」の詳細を見る

【事例4】日鉄興和不動産株式会社「LIVIO Life Design! SALON」

不動産購入においてもOMOへのチャレンジが始まっています。2023年に発表されたのが、日鉄興和不動産株式会社の「LIVIO Life Design! SALON」。実寸での間取り、家具配置の体感、眺望シミュレーションまでができるリアルサイズスクリーンを設置し、バーチャル内覧を実現しています。

さらに、LIVIO Life Design! SALONで販売される物件は、オンラインストア「sumune」に掲載され、購入相談はもちろん、ローン審査、申し込み、契約などの手続きもオンラインで行えるようになる予定です。「現地に行かずに不動産の購入ができる」という新たな顧客体験への挑戦といえるでしょう。

日鉄興和不動産株式会社「LIVIO Life Design! SALON」※画像引用:日鉄興和不動産株式会社のプレスリリース

【事例5】Amazon.com「Amazon Go」

OMOを語るうえで絶対に外せないのが、Amazon.comが運営する「Amazon GO」。Amazon GOの店舗入口には会員用アプリのコードを読み取るゲートがあり、利用客はここに自分のスマホをかざして入店します。その後は自由に商品を手に取ったりショッピングバッグに入れたりするだけで、アプリ内の買い物かごに商品が追加され、そのまま店を出ると、オンライン上で自動的に決済が完了します。OMOの最先端を行く成功事例といえるでしょう。

ちなみに、このような顧客体験を実現しているのが「Just Walk Out」という技術です。Amazon GOの店内には多数のカメラとマイク、センサーが設置されており、これらと画像識別システムやディープラーニング・アルゴリズムを組み合わせて、入店した人の動きをトラッキング。手に取った商品を棚に戻す動作さえも認識して、購入のキャンセル処理ができるほどの精度の高さを誇っています。

【事例6】アリババ「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」

アリババ(阿里巴巴・Alibaba)が運営するスーパーマーケットの「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」は、ネットスーパーとグローサラント(食料品店と飲食店を組み合わせた業態)のふたつの面を併せ持ち、実店舗とオンラインストアを融合させた非常に先進的なOMOを実現しています。

陳列された商品のバーコードをモバイルアプリで読み取ることで、価格だけでなく在庫数や、産地などの情報を確認可能。有人のレジはなく、利用客は無人レジで商品をスキャンし、基本的にモバイルペイメントで支払いをします。また、店舗でスキャンした商品をすぐさま自宅へ配送してもらうことも可能です。

さらにユニークなのは、オンラインで注文した食材を使った料理を店内レストランで食べたり、過去に店舗で購入した商品を購入履歴からオンライン注文できたりすること。オンライン・オフラインの垣根をなくした新しい購入体験を、様々な切り口で実現しているのです。

【事例7】株式会社バニッシュ・スタンダード「STAFF START」

株式会社バニッシュ・スタンダードが提供する「STAFF START」は、店舗スタッフと顧客をオンラインで結びつけることにより、様々な小売業のOMOを支援するツールです。コーディネート提案やアイテムのレビュー、各種動画などを店舗のスタッフが投稿し、オフラインと同じ水準の接客をオンラインでも実現。SNSを活用したきめ細やかな顧客フォローも可能です。

西武・そごうの公式ECサイト「e.デパート」、イオンの公式通販「イオンスタイルオンライン」、ジーンズセレクトショップのライトオンなど、多数の有名企業が導入し、ますます利用が拡大しています。

OMOを推進するために求められる5つのこと

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戦略としてのOMOや先行する事例を知ると、OMOの実現が非常に優れたもののように見えてきます。では、企業は何から着手、どのように推進していけばいいのでしょうか。確実に押さえておくべき5つのポイントを紹介します。

OMOの先にある顧客体験とビジネスモデルの設計

OMOを推進するうえで真っ先に着手したいのが、OMOが実現した先にある顧客体験の設計です。冒頭で述べた通り、OMOの主役は顧客体験。ゴールとなる顧客体験が明確でないと、OMOを実現すること自体が目的となり、顧客に高い価値を提供できなくなってしまう恐れがあるのです。OMOの実現によってサービスやブランドが提供できるようになる顧客体験、それによって発生するビジネス上のメリットをしっかりと見極めることが求められます。

例えば、マクドナルドのモバイルオーダーは「注文待ちの行列に並ぶ必要がない」「受け取り方、食べ方も自由に選択できる」という新しい体験をユーザーに提供することで成功を果たしていると考えられます。ビジネスの側面においても、事前注文によるオペレーションの効率化や、サービス品質の向上に貢献しているはずです。

オンライン・オフラインに散らばった顧客データの統合・連携

オンライン・オフラインの懸け橋となるのが顧客データです。オンラインで収集したデータ、オフラインで集めた情報を一元管理し、データに基づいたサービスを提供することでOMOは実現するものといえます。データが分散している環境では、オン・オフで一貫したサービスを提供することができず、結局のところ顧客体験は分断されたままとなってしまいます。OMOのベースとなるのが顧客データの統合と連携なのです。

■顧客データの統合・連携がOMOならではの顧客体験を生み出す

顧客データの統合・連携を介してOMOならではの顧客体験が生まれることをわかりやすく説明した図オンラインの顧客行動とオフラインの顧客行動をつなぐのがデータ。それぞれで収集した情報を一元管理し、顧客に対してデータに基づいたより有益なサービスを提供することでOMOは成立する。

オンライン・オフライン共通の顧客接点の整備

顧客がオンライン・オフライン共通で利用できるデバイスの整備も重要です。オンラインではPCやスマートフォン、オフラインでは口頭や店舗端末といった形で、チャネルによってサービスと顧客の接点が分けられていると、コミュニケーションが分断され、別のものと認識されてしまうからです。データの収集、一元管理のハードルも高くなります。

そこで多くの企業が採用しているのがモバイルアプリです。現在、スマートフォンは自宅でも外出先でも常に利用されるデバイスとなっており、アプリによって顧客と接触を持つのが最適解と考えられているのです。もちろんOMOを体現するためのデバイスはスマートフォンに限定されるものではありません。カーナビのような車載端末が主役になることもあるでしょう。将来的にはVRゴーグルのようなデバイスがOMOの核となるかもしれません。

■チャネル横断で使用できるデバイスが一貫した顧客体験を創出

OMOの確立のためには顧客体験の中に常に存在するデバイス・システム(アプリ)が必要なことをわかりやすく説明した図オンライン・オフラインで共通して使用されるデバイスが存在することで、データ収集が効率的になり、顧客体験にも一体感が生まれる。

オペレーションや製造、ロジスティクスの整備

OMOを実現し、新しい顧客体験を創造しようとすると、人的オペレーションや製造、輸送などのシステムにも変革が求められます。商品・サービスの提供が滞りなく行われるよう、並行して仕組み作りを進めなければなりません。

例えばECサイトでの購入・閲覧データを店舗でも利用できるシステムを構築したとしましょう。しかし、そのデータから読み取れる顧客の嗜好や来店目的を店舗スタッフが活かすことができなければ、ECサイトと店舗で得られる体験は分断されたままです。OMOを絵に描いた餅とせず、新たな体験を創出するためには、サービスや商品が顧客に届くまでを俯瞰したビジネスの再設計が必要なのです。

事業戦略としての意思決定+細かな積み重ね

OMOは新しい顧客体験を生み出すこと、すなわちビジネスの変革ともいえます。販促やマーケティング部門が単独で推進するのは難しいでしょう。事業戦略としての意思決定を伴うものと考えたほうがいいかもしれません。

また、大規模なプロジェクトになりがちだからこそ、一足飛びに成果が表れるものでもありません。データ基盤、デバイス、アプリ、オペレーションや製造、輸送、それぞれを担当する部門が密に連携し、一歩ずつ理想像へと近づけていく取り組みであることを覚えておきましょう。

ReproOMO支援事例

Reproでは、OMOの推進を前提とした、Web、アプリマーケティングの支援も行っています。OMOのファーストステップとして、Webサイトの売り上げ改善やアプリでのコミュニケーション改善は欠かすことができません。ぜひご覧ください。

青山商事株式会社「洋服の青山アプリ」「洋服の青山オンラインストア」

OMO戦略を統合支援し、ECのCVRが200%以上改善

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(「洋服の青山アプリ」「洋服の青山オンラインストア」青山商事株式会社様)
事例を詳しく見る

株式会社エディオン「エディオンネットショップ」

OMOの実現を前提としたECサイト運用でCVR前年比150%改善

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(「エディオンネットショップ」/株式会社エディオン様)
事例を詳しく見る

OMOとO2O、オムニチャネルの違い

最後に、OMOと混同してしまいがちなマーケティング用語である「O2O」「オムニチャネル」との違いについても解説しておきましょう。これらの言葉は複雑に絡み合っているので、整理して考える必要があります。

O2Oとは?OMOとの違い

O2Oは「Online to Offline」の略語です。オンラインでのコミュニケーションが発生している顧客を店舗やイベント会場のようなオフライン接点へと誘導するマーケティング施策を意味しています。具体例を挙げると「メルマガでクーポンを配布して来店促進を図る」「SNS上のキャンペーンに参加したユーザーにだけ来店時のポイントを付与する」といったものが挙げられます。

OMOと大きく異なるのは、オンラインとオフラインを明確に分けている点、そして、オンラインからオフラインへの一方向の誘導を目的としている点です。

■O2O施策における顧客コミュニケーション

O2O施策における顧客コミュニケーションをわかりやすく説明した図O2Oはオンラインとオフラインを明確に分けて考え、オンラインからオフラインへ顧客を誘導することを目的としている。

O2Oとはどんなマーケティング施策?目的・メリットと具体的な実施方法を徹底解説

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O2Oの解説記事へ

オムニチャネルとは?OMOとの違い

オムニチャネルとは「すべてのチャネル(販路)」という意味です。Web、アプリ、SNS、店舗、テレビ、カタログなど、あらゆるチャネルで商品との接触や購入が可能な環境を指しています。

OMOと異なるのは、O2Oと同様にオンライン、オフラインを分けて考えるケースが多いこと。また、主がユーザーではなく、チャネルであるという点です。オムニチャネル戦略、オムニチャネル化といった形で使われることが多く、ユーザー体験ではなく販売チャネルそのものをいかに変革していくかという観点が重要視されます。

OMOを実現するための具体的な施策としてオムニチャネルが必要になるケースがあると考えるのがいいでしょう。

■オムニチャネルにおける顧客コミュニケーション

オムニチャネルにおける顧客コミュニケーションをわかりやすく説明した図オムニチャネルの主眼は販売チャネル・コミュニケーションチャネルそのもの。顧客体験を起点とするOMOとはアプローチが異なっている。

オムニチャネルとはどんな戦略?意味とメリット、成功の鉄則

オムニチャネルとはどんな戦略?意味とメリット、成功の鉄則

オムニチャネルの解説記事へ

企業の未来を見据えて地道なOMO戦略を

OMOは単なるマーケティング施策ではありません。テクノロジーを存分に活用し、顧客体験=ビジネスモデルを変革していく方法論です。その分、実現の難易度は高く、今すぐ取り掛かったとしても理想像に近づくのは数年先になるでしょう。

だからこそ、一歩一歩、小さな成果を積み重ねながらプロジェクトを推進することが重要。本ページで紹介した顧客体験中心の考え方、整備すべきシステムをしっかりと理解し、会社全体を巻き込みながら協力を得る形でスタートを切ってください。

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