【スクープ・スマホ新法】Apple・Googleが気づかれたくない?アプリ外決済手数料を「0%」にする方法の存在

山﨑 信潔
山﨑 信潔
2025.12.19

目次

2025年12月18日、「スマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)」が全面施行されました。Reproは、同法律によって改定されたApple、Googleのガイドラインを解説、ディスカッションするイベントを即日で実施。
イベントにはアプリ事業者のほか公正取引委員会からの出席があり、ガイドラインの解釈や運用について議論が白熱。Apple、Googleの公式情報からは容易に読み取れない、「スマホ新法施行後の本当のアプリ外決済ガイドライン」が明らかになりました。Reproの独自情報としてお届けします。

スマホ新法が勝ち取ったアプリストア関連の手数料改定

2025年12月18日、Apple、Googleが揃って、日本国内におけるアプリストア関連のガイドラインを改定しました。スマホ新法の求めに応じたものです。ポイントはふたつ。ひとつはAppleの第三者(代替)アプリストアの解禁。「App Store」以外のアプリストアをiOS端末にインストールできるようになっています。

もうひとつがアプリ外決済の解禁と手数料。これまで原則不可とされていたものが許可され、手数料が明らかになりました。詳細は下表の通り。なお、「代替決済」とは、Apple、Googleの公式決済システム以外をアプリ内で使用する方法です。

これまで「アプリ外決済誘導」と呼ばれていた、「アプリ内にWebストアへのリンクを設置する手法」は「外部決済(リンクアウト)」という形で定義されており、標準的なアプリにおいてAppleは15%、Googleは20%の手数料を徴収する仕組みとなりました。

■【App Store・Google Play】スマホ新法による手数料等の変化

  Apple Google
  施行前 施行後 施行前 施行後
代替アプリストア 不可 5% ※2 手数料なし 手数料なし
代替決済 不可 21% ※3 不可 ※5 26% ※7
外部誘導(文字列のみの誘導) 不可 手数料なし 不可 ※6 手数料なし
外部決済(リンクアウト) 不可 ※1 15% ※4 不可 20% ※8
標準となる料率(アプリ内課金) 30% 26% 30% 30%

※1:リーダーアプリは手数料なし
※2:代替アプリストアまたは代替アプリストア経由で配布されたアプリに係る売上が対象
※3:代替決済を通じて販売された売上が対象、小規模事業者等は10%
※4:リンク後7日以内の外部Webストアでの売上が対象、小規模事業者等は10%、リーダーアプリは手数料なし
※5:非ゲームアプリは手数料26%または11%
※6:アプリ内課金を行わない消費専用アプリなら可
※7:代替決済を通じて販売された売上が対象、小規模事業者等は11%
※8:リンク後24時間以内の外部Webストアでの売上が対象、小規模事業者等は10%

<独自速報①>
アプリ外からWebストアへの誘導は手数料0%維持

ここからは、Apple、Googleの公式発表からは容易には読み取れない、Repro主催イベントのみで確認・共有された、アプリ運用における重要な事実をお伝えしていきます。

第一はこれまでアプリ事業者が苦心を重ねてきた、「アプリ外からWebストアへ誘導し、デジタルアイテム・コンテンツを販売する手法」に対する手数料です。

結論からいうと手数料0%が維持されます。Reproの独自調査によると、この手法によるアプリ事業者の売上は、売上全体の50%程度を占めていることがわかっています。これに手数料をかけられるのではないか、制限されるのではないかと懸念していたアプリ事業者は多かったはず。安心してこれまでの取り組みを継続してください。

<独自速報②>
リンクなしのアプリ内広告表示なら手数料0%が確定

アプリ事業者が最も注目すべきなのは、「外部誘導(文字列のみの誘導)」という見慣れない項目。Apple、Googleともに「手数料なし」となっています。これは、Webストア決済への「直接的なリンク」ではなく、「リンクが設置されていない広告文」を意味するもの。

言い換えれば、リンクさえ設置しなければ手数料0%で、アプリ内でも告知し放題ということ。リンクの有無で明確に手数料率に差が設けられているのです。例えば、リンクなしのアプリ内メッセージで「『アプリ名 Webストア』で検索」などと告知することもできます。

<独自速報③>
アプリ外決済用リンクの安易な設置はリスク大

前述の表で「外部決済(リンクアウト)」と記載した「アプリ内にWebストアへのリンクを設置する手法」。「標準となる料率(アプリ内課金)」よりも手数料率が低いため、積極的に活用したくなります。しかし、ここに大きな落とし穴が存在していることが判明しました。

アプリ内にWebストアへのリンクが設置されている場合、ユーザーは「アプリ内」「アプリ外」のどちらからWebストアへアクセスするでしょうか。当然、アプリ内からWebストアへとアクセスするケースが多いはずです。すると改定までは0%であった手数料が、Appleなら15%、Googleでは20%に跳ね上がってしまうのです。

なお、ストアではない公式サイトへのリンクについてはケースバイケースで判断される見込み。

さらに注意しなければならないのが、手数料徴収の対象期間です。掲載の都合上、注釈としての記載しかできなかったのですが、「※4」「※8」を必ず確認してください。ユーザーがアプリ内に設置された誘導リンクをクリックしてしまうと、Appleではその後7日間、Googleではその後24時間、そのユーザーのWebストアでのコンテンツ購入すべてに手数料が発生してしまう仕組みなのです。

アプリ外決済を利用するようなヘビーユーザーは、課金頻度が高くなりがちです。毎日、課金するような人も多いはず。特にAppleの場合、アプリ内メッセージでWebストアに誘導すると、リンククリック後7日間の売上に手数料がかかり、収益を15%も圧縮するという事態に陥ります。

いかにアプリ内リンクを経由せずにWebストアへと誘導するか

今回のイベントで明らかになった情報を総合すると、今後、アプリ事業者が取り組むべき戦略が明らかになります。ユーザーを「いかにアプリ内リンクを経由せずにWebストアに誘導するか」。これに注力できない事業者は大きく収益率を落とすことになるでしょう。逆に成功した事業者の収益率は大幅に伸びるはずです。

アプリ事業者には大きな発想の転換が迫られています。アプリに閉じたコミュニケーションで収益を最大化することはもはや不可能です。Reproではすでに、アプリ内リンクを経由せずにWebストアに誘導し、さらにWebストア自体の収益性を高めるマーケティングソリューションを開発しています。近日中に、プレスリリース等で発表を予定しているので、続報をお待ちください。

【写真】イベント当日の様子。平日にも関わらず50名以上のアプリ事業者が詰めかけた。イベント当日の様子。平日にも関わらず50名以上のアプリ事業者が詰めかけた。

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