アプリをDLしてもらうことをゴールにしてしまっていませんか?登録数やDL数が増加したからといって、アプリのリテンション率が向上するわけではありません。初めてアプリをDLしたユーザーのうち、アプリを利用してくれるのはたった14%のユーザーのみで、30日後にアプリを使い続けてくれているのは、たった2.7%です。市場全体では、90日後のエンゲージメント率は4%と言われています。
新規ユーザーにアプリの魅力をどう伝えるか、いかに簡単にアプリを使ってもらえるかが、アプリ事業の成功と失敗の分かれ目になります。DLしてもらった最初の週に継続して利用してくれたユーザーのうち、55%がその後もアプリを使い続けてくれるという数字からも、いかに最初の週にアプリの魅力をユーザーに伝えられるかが重要かがわかります。
ここで、ユーザーオンボーディングが役に立ちます。ユーザーオンボーディングとは、ユーザーにアプリをできる限り素早く簡単に理解、体験、開始してもらうことを指します。
ユーザーオンボーディングは、ユーザーのリテンション率を向上させる為に重要な役割を果たしています。優れたオンボーディングを上手く実現させた結果、エンゲージメントを最大4倍に高められたという事例もあります。
では、たくさんのアプリがある中で、どのようなオンボーディングを実現すればユーザーにアプリの魅力を最大限伝えることができるのでしょうか?
今回は、オンボーディングにおける7つのテクニックをご紹介します。これらのテクニックを使うことで、それぞれのアプリに合ったオンボーディングプロセスを制作でき、リテンション率やエンゲージメントを高めることができるでしょう。
アプリでできることに集中する
オンボーディングでは、アプリの一番重要な機能をユーザーに伝えてください。このとき、優れた機能を全て紹介するのではなく、特に一番伝えたいものを紹介するようにしましょう。
これにより、ユーザーは自分のニーズに合っているかどうか理解できるため、継続的にアプリを利用し続けてくれるユーザーを増やすことができます。
DL後、すぐに機能を紹介することでアカウントを登録したいと思うユーザーを増やすことが可能になります。なので、重要な機能を紹介してから登録画面へ誘導することを推奨します。
『Evernote』は、これを上手く実現しています。
「Evernote」の場合、3つの重要な機能を新規ユーザーに紹介し、アカウントを作成するよう促します。その後、アプリのチュートリアルが始まるようになっています。
このテクニックで、他のアプリと異なる点はどこなのか、どんな問題を解決できるアプリなのかをユーザーに知らせることができます。このとき、あまりにも大げさなアプリの紹介をするとユーザーがチャーンしてしまう可能性を高めてしまうため、実際の機能の紹介に留めましょう。
ペルソナベースのオンボーディング
あなたのアプリは、複数のペルソナをターゲットにしていることでしょう。それぞれのペルソナに対して、ニーズに合ったオンボーディングを使い分けることで、ユーザーの満足度を上げることができます。
マーケターやデザイナー、CEO、代理店など、立場や視点によってターゲットを定める方法は様々ですが、大きく分けて以下2つの方法があります。
- 全てのユーザーに適用する一般的なオンボーディングプロセスを作る(コスト削減も可能)
- ペルソナごとにカスタマイズしたプロセスを作る
あなたがユーザーなら、アプリを開いたときにどのようなプロセスに魅力を感じるでしょうか?
ペルソナベースのオンボーディングは、アプリで使える機能を、それぞれのユーザーに寄り添った形で伝えられるため、エンゲージメント率を高めることができます。
『Canva』の例では、まずユーザーが何のためにアプリを使用したいのかを選択してもらい、その後カスタマイズされたオンボーディングに進みます。例えば、小規模ビジネス(Small Business)を選んだ場合、パンフレットやバナー、ソーシャルメディア投稿といった小規模ビジネスがよく使用するであろうテンプレートが表示されます。
オンボーディングをペルソナベースに行うことで、アプリでのファーストサクセス(ユーザーがアプリを利用する最初の目的を達成すること)を素早く達成してもらうことが可能になります。これは、ユーザーがそのままアプリを利用し続けてくれるか、チャーンを増やしてしまうかを左右する、重要な要素となります。
ファーストサクセスを達成しやすくする
ユーザーがアプリをDLするのには、必ず理由があります。問題を解決したり、情報を得たり、楽しんだりと理由はさまざまですが、それをどれだけ簡単に達成させてあげられるかは、オンボーディング次第です。
ユーザーがアプリでのファーストサクセスを達成する瞬間にエンゲージメントが大きく向上します。
より早くファーストサクセスを達成させることができれば、リテンション率の向上につながります。逆に、ファーストサクセスを達成させることができなければ、チャーン率の増加を高めてしまうでしょう。
このため、オンボーディングで、ユーザーにできるだけ早くファーストサクセスを達成してもらうようデザインすることがとても重要なのです。『Clash Royale』を例に見てみましょう。このアプリでは、登録後、ユーザーはすぐにデモバトルに参加するというオンボーディングになっています。
デモバトルではユーザーに勝たせることでファーストサクセスを達成させることが出来ます。
このように、ユーザーが素早くファーストサクセスを達成できるようにオンボーディングをデザインすることができれば、リテンション率も向上します。
ユーザーガイダンスとチュートリアル
ユーザーがアプリに戻ってきてくれない大きな理由として、アプリの使い方がわかりにくいことが挙げられます。チュートリアル形式のオンボーディングは、ファーストサクセスを達成させ、アプリを使い始めてもらうのに優れた手法の一つです。
『Mailbox』の例を見てみましょう。『Mailbox』は、8つの短いステップを通してアプリの使い方を紹介しています。
この段階では、全機能を説明する必要はなく、アプリを使い始める方法や、コアとなる機能についてのみ、紹介することが大切です。
コアとなる機能の使い方のガイドは必須ではありますが、ユーザーが、どんな機能があるのかを自分自身で使いながら知っていく余地を残しておくことでもエンゲージメントとリテンションの向上に繋げることができます。オンボーディングでアプリの使い方を紹介する方法を、いくつかご紹介します。
- ユーザーに操作してもらいながら機能を説明するチュートリアル
- 使い方を紹介する画像や動画
- チュートリアルの進行段階を示すバー
- ツールを使用するコツ
- ウォークスルー(段階的な解説)
- 画像や動画の字幕
- トレーニング動画
こうした手法で、アプリの使い方をわかりやすく学んでもらうことによって、ユーザーが使い方がわからず、DLしたまま使わずに放置してしまうという状況を避けることができます。
登録プロセスをシンプルに
オンボーディングでは、アカウント登録を行わなければならないことがあります。登録情報はリードを獲得するのに使われるのでとても重要ですが、タイミングが好ましくなかったり、登録するために入力する情報があまりにも多かったりすると、チャーンしてしまう可能性があります。そのため、ユーザーが思わず登録したくなるようなプロセスに仕上げる必要があります。
「ConversionXL」が紹介しているアカウント登録のフローは3種類あります。
a. アカウント登録完了後にアプリの使用が可能になる
一般的に最もよく使われているフローです。アカウントを作成し、メールアドレスを認証しないとアプリの利用ができないため、あなたのアプリがまだ新しく、認知度の低いものであれば、登録してくれるユーザーはあまりいないでしょう。その場合はこのフローにする必要はありません。
b. 最小限のアカウント登録後にアプリの使用が可能になる
このフローでは、メールアドレスを入力した直後にアプリの利用が可能になります。アカウント登録の完了は、後から行うことができます。これはCVRの向上に集中したフローで、すでに認知度の高いアプリに、より効果的です。
c. 起動直後にアプリ使用が可能になる
これが最適かつ最も推奨されるフローで、登録をすることなく、アプリの全ての機能へのアクセスが可能となるものです。そのため、ユーザーはアプリが使いやすく、自分の目的に合ったものだとわかった時にアカウントを登録してくれるので、チャーンも少なく、新規アプリにとっては最も理想的なフローといえるでしょう。
加えて、起動直後からアプリの全機能が使えるため、ユーザーはアプリの体験を楽しむことができ、エンゲージメントの向上にもつながります。エンゲージメントを向上させたいのであれば、このフローを利用し、ユーザーが自分のタイミングでアカウントを登録できるようなフローにすることを推奨します。
アプリが自分のニーズに合っているとわかれば、ユーザーはアカウント登録に進んでくれます。
アカウント登録を2回に分けることでエンゲージメントを向上させたいのであれば、アカウント登録をオンボーディングの最後に持ってくるとより効果的です。
アカウント登録ではデザインだけではなく、登録にかかる時間もエンゲージメントに大きく影響します。登録プロセスが短く簡単であればあるほど、登録数が大きくなります。
登録フォームを作成する際には、端的で基本的な情報のみを要求するように心がけてください。こうした配慮によって、ユーザーの負担を軽減することができるでしょう。
プッシュ通知
オンボーディングにおいて、ターゲティングやペルソナを考慮したプッシュ通知を活用していますか?まだしていなければ、ぜひ活用してください。それぞれのユーザーに合わせたアプリの活用方法を伝えてあげることで、利用してくれるユーザーをさらに増やすことが可能です。プッシュ通知の導入により、エンゲージメントが88%も上昇した事例もあります。
統計によると、プッシュ通知を受け取ったユーザーの65%は、30日以内にアプリに戻ってきます。また一般的に、プッシュ通知を送ることでリテンション率は10%向上します。
エンゲージメント改善を目的としたプッシュ通知には、リマインダーやアップデート情報、目標の達成状況、ユーザーの行動を促す、といったように、ユーザーに合わせたさまざまな情報を通知することを推奨します。たとえば、ユーザーが登録後にアプリを使っていない場合、重要機能を紹介するプッシュ通知を送ることで、また利用してもらえる機会を増やすことができます。
メールを利用する
さらにエンゲージメントを高めるために、オンボーディングに、メールを利用しましょう。アプリをDLした週にメールを送信したことで、リテンション率が2ヶ月で130%向上した事例もあります。
アプリをDLして間もない新規ユーザーがアプリを使用する上で問題に直面した際、アプリを引き続き利用してもらうためには、どういった方法が必要になるのでしょうか。『Zapier』が、こうしたユーザーに送った実際のメールを見てみましょう。
ここでは、まずユーザーが設定に困っていることを理解し、助ける内容のメールであることを伝え、その後、アプリの活用方法、機能のリマインダーを記載しています。このように、ターゲティングとパーソナライズが行われているメールを送ることで、ユーザーの問題を解決し、ユーザーをアプリに呼び戻すことができます。フォローアップのメールは、新規ユーザーのファーストサクセスを手助けし、オンボーディング後にアプリを使わなくなってしまったユーザーを呼び戻す目的に使いましょう。
最後に
たとえ優れたオンボーディングの実現ができたとしても、エンゲージメントを最大限にすることは難しいですが、オンボーディングは、エンゲージメントやリテンション率を向上するための重要な手法の一つです。今回紹介した7つのテクニックを使うことで、ユーザーが問題を抱えがちな早期段階において、エンゲージメント率を確実に向上することができるでしょう。
この記事は、Apptentive社のブログ"7 Onboarding Techniques to Boost App Engagement"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Apptentive in English under the permission from the author.