Search Adsを利用している企業にとって、Creative Setの導入はさまざまなクリエイティブを多くのキーワードに合わせて最適化することができる絶好のチャンスです。
アプリの運営者はSearch Adsのアセットのテストもできるようになりました。しかし、このアップデートでApp Storeにおける本格的なA/Bテストが可能になった訳ではありません。
本記事では、Creative Setを活用してSearch Adsのアセットをテストする方法と、このテストにおける制限についてご紹介していきます。
Creative Setを利用してSearch Adsのアセットをテストする方法
Creative Setは、アプリの詳細ページにあるスクリーンショットとプレビュー動画の中から選択したもので構成されます。Creative Setの主な目的は、広告グループのキーワードやオーディエンスに合わせてスクリーンショットやプレビュー動画をSearch Ads上で表示させることです。
Search AdsのCreative Setは、最大10個まで作成することができます。また、各Creative Setに追加できるアセットの数は以下の通りです。
縦向きの場合:4つ以上のスクリーンショット/プレビュー動画
横向きの場合:2つ以上のスクリーンショット/プレビュー動画
縦向きの場合:3つ以上のスクリーンショット/プレビュー動画
横向きの場合:2つ以上のスクリーンショット/プレビュー動画
Creative Setを使ったSearch Adsのアセットのテストは、非常に簡単に行うことができます。
Creative Setを作成し、それぞれの広告グループやキャンペーンに合わせて最適化する際に、CVRとTTRに基づいて広告のパフォーマンスを追跡しましょう。
Creative Setを作成する際に、「デフォルト」と表記されているスクリーンショットやプレビュー動画は使用しないでください。これはデフォルト広告で使用されているアプリの詳細ページの最初の2つのアセットは、すでにSearch Adsで使用されているためです。
従って、デフォルト広告のパフォーマンスと、作成したCreative Setのパフォーマンスを比較するほうがCreative Setを有効活用することができます。
また、Appleはテストをする際にそれぞれのCreative Setに同じ数のアセットを使用することを推奨しています。これにより、それぞれのCreative Setのパフォーマンスの比較がよりしやすくなるのです。
下記が、推奨されている各Creative Setに使用するアセットの数になります。
3つの縦向きのスクリーンショット/プレビュー動画。
1つの横向きのスクリーンショット/プレビュー動画。
2つの縦向きのスクリーンショット/プレビュー動画。
1つの横向きのスクリーンショット/プレビュー動画。
Creative Setを利用したテストにおける制限
最新(2018年6月時点)のApple Search AdsのアップデートとCreative Setの導入により、App Store内でのA/Bテストが可能になると言われていましたが、これは現時点では実現していません。
「Creative Setを活用してクリエイティブのテストを行うことは、広告に対するユーザーからの反応を分析し、Search Adsのパフォーマンスを向上させるための素晴らしい方法です。しかし、Search Adsにおいてこの機能が導入されたにもかかわらず、ASOのためのA/Bテストのツールはいまだに提供されていません。」
Creative SetがA/Bテストツールの代わりにならない理由として、以下のような制限があることが挙げられます。
Creative Setを利用したテストは、Search Adsにおいてのみ行うことができる
Creative Setは、Search Adsにおけるクリエイティブの最適化には非常に効果的です。一方で、アプリ詳細ページやオーガニック検索結果におけるクリエイティブの最適化を行うことはできません。ユーザーのアプリに対する反応は、ユーザーが見ているものが広告であるかオーガニック検索結果であるかによって大きく異なるため、これは大きな制限であると言えるでしょう。
「TTR benchmarks」の最新の調査によると、ユーザーがApp StoreにおいてSearch Adsを目にする機会が急激に増えているため、広告とオーガニック検索結果に対するユーザーの行動は、これに伴い著しく変化しているようです。たとえば、Search Adsの平均TTRは、オーガニック検索結果で1位に表示されるアプリの平均TTRと比較すると、約2倍も低くなります(7.11%対19.29%)。
Search Adsを利用してアプリ詳細ページのテストを行うことはできない
ユーザーの反応の差は生まれるとはいえ、表示方法がSearch Adsとほとんど同じであるオーガニック検索結果においては、Creative Setを使うことで効果的なクリエイティブを特定することができるかもしれません。しかし、このテストでは、アプリ詳細ページの最適化はできません。これは、Creative Setを利用したテストでは、最も重要な要素であるアプリのアイコン、アプリ名、説明文などのメタデータをテストすることができないためです。
Search Adsはキーワードとマッチタイプに基づいてインプレッションが左右されるため、ターゲティングの方法は、Facebook広告やGoogle AdWords、また、その他のアプリ内広告とは大きく異なります。またCreative Setは、Search Ads以外で流入してくるユーザーには適用できません。
そのため、特にSearch Adsにおけるトラフィックに依存している場合は、Creative Setを利用したテスト結果を分析する際は注意しましょう。この場合、まずは専用のA/Bテストツールを使ってASOを行うことが大切です。
Creative Setにおけるスクリーンショットとプレビュー動画の制限
前述したように、Creative Setで利用するアセットは、すでにアプリ詳細ページにあるものでなければなりません。これは、Search Adsのアセットのテストにおける最も大きな制限です。
スクリーンショットの数の制限がアップデートされたことで、App Storeのアプリ詳細ページに最大10個のスクリーンショットを追加することができるようになりました。10個という数は、アプリ詳細ページにおいては多すぎるようにも思えますが、Creative Setを利用する場合に大いに活用できます。
Creative Setにおけるスクリーンショットとプレビュー動画は、アプリ詳細ページと同じ順序で表示されるということを覚えておきましょう。言い換えると、どのアセットを表示するかを変更することはできても、表示する順序を変えることはできないということです。例えば、Creative Setを作成する際、2つ目のスクリーンショットを1つ目のスクリーンショットの前に置くことはできません。
この制限があることで、まったく異なるコンセプトのクリエイティブのテストをすることが難しくなります。現にアプリ詳細ページにおいて、統一感のない色使いや異なるデザインのさまざまなスクリーンショットを使っているアプリはほとんどありません。
Creative Setはキーワードに合わせて作成される
Creative Setはさまざまなキーワードに合わせて最適化するためのものであるため、アプリ全体におけるパフォーマンスの判断は難しくなります。Creative Setを使ったテストから、どのスクリーンショットやプレビュー動画の組み合わせがアプリ詳細ページで最初にユーザーの目に留まるクリエイティブにふさわしいものであるかを判断をすることはできません。
例えば、Creative Setを使ってテストを行い、2つの異なるキーワードに対してそれぞれ最もパフォーマンスの良いアセットが特定できたとします。この2つのどちらがより良いパフォーマンスをするかを決定するためには、このCreative Setを使って広告グループレベルでテストを行い、パフォーマンスの平均値を確認すると良いでしょう。
利用できる国は限定されている
2018年9月現在、Apple Search Adsのストアフロントは13カ国に限られています。
- オーストラリア
- イタリア
- 韓国
- スペイン
- ドイツ
- 日本
- フランス
- カナダ
- メキシコ
- ニュージーランド
- スイス
- 英国
- アメリカ
おそらくこのストアフロントは拡大し続けると思われますが、現時点ではこの制限がテストをする上で大きな妨げになっています。また、Creative Setを利用したテストにおいてアセットをローカライズすることもできません。
Creative Setsを使ったテストの統計的有意性を測るのは困難である
Creative Setはテストを目的としてリリースされた訳ではないため、Search Adsにはテスト結果の統計的有意性を測るための機能がありません。よって、テスト結果の統計的有意性は自分で判断することになります。専用のA/Bテストツールであれば、パフォーマンスが信用できるものであるかの測定はすべて自動的に行われます。
Search Adsでテストを行うためのサンプルユーザーの数は、手動で計算した方がよい
前述の6とも関係していますが、Search Adsのテストに欠けているもう一つの重要な要素は、テストを行うサンプルユーザーの数です。Creative Setを使ってテストを行う場合、テスト結果をより信頼できるものにするため、自分でユーザーの数を算出する必要があります。
ユーザー行動についての洞察がない
CVRとTTRが、Creative Setを使ったテストから得られる唯一の指標です。この指標だけでは、パフォーマンスの良いアセットを特定することはできても、ユーザーがそのアセットを好む、または嫌う理由までは断定できません。マーケティング戦略を強化するには、より高度な分析が必要です。
例えば、プレビュー動画のパフォーマンスを分析したい場合、Creative Setを使ったテストでは、Search Adsにおけるプレビュー動画の平均視聴時間や、プレビュー動画を見た後にアプリをDLしたユーザーの数、またはどのプレビュー動画が最もアプリのDLを促しているのか、などの情報を得ることができません。専用のA/Bテストツールを使うことで、これらすべてのデータを分析することができるのです。
そのため、App Storeにおける検索やアプリ詳細ページを最適化するには、より確かで細かな分析を行うことができるA/Bテストツールを使用することを推奨します。
Creative Setを使ったテストの非効率性
Search AdsにおけるCreative Setを利用したテストでは、そこまで有効的な結果を得ることはできません。また、同時に実行できるテストの数は、既存のCreative Setの数によって制限されます。さらに、テストのためにコンセプトを変えたアセットをCreative Setに追加するためには、アプリ詳細ページのアップデートとAppleからの承認が必要になるため、かなりの時間を要します。
ローンチ前のテストはできない
プレリリースは、アプリの成功と失敗を草分けするとても重要な期間だからこそ、アプリリリース前のテストに時間を費やすことが大切なのです。リリース前にASOをしておくことは、リリース初日のApp Storeでの成果に大きく影響するだけでなく、ユーザーがDLしたいと思うアプリはどんなものなのかを検証し、実行するのにも役立ちます。
ここまでで分かるように、Creative Setは無料でApp StoreのA/Bテストができるツールとしては制限がありすぎるのです。さらに、Creative Setを利用するにあたって、Search Adsを掲載することで発生する料金は引き続き支払う必要があるため、一概に無料であるとは言えません。
一方で、Creative Setは、Search Adsを最適化するためにはとても優れた手段と言えます。例えば、出会い系アプリの場合、ユーザーの性別によって表示するスクリーンショットを女性と男性で分ける事は効果的です。
このように、Creative SetはSearch Adsの最適化には優れていますが、ASOの戦略には専用のA/Bテストツールの導入が必要であると言えるでしょう。
この記事は、SplitMetrics社のブログ"Creative Sets: Testing within Apple Search Ads and Limitations of This Method"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on SplitMetrics in English under the permission from the author.