アプリによってビジネスモデルは異なりますが、大多数のアプリがゴール(KGI)にしているのは売上増かと思います。では、あなたは売上増に向けた指標の把握と整理ができているでしょうか?
本記事では、KPIツリーを使ってアプリの売上に貢献する指標を洗い出し、各指標について説明したいと思います。
KPIツリーとは?その重要性
KPIツリーとは、アプリのKGIを売上とした場合、売上を構成する要素を分解して施策が実行可能になるレベルまで落とし込まれた指標(KPI)の一覧です。
KPIツリーの作り方にお悩みの方は、アプリのビジネスモデル別にKPIツリーの作成方法、作成事例を紹介した「【最新版】EC・Web&アプリサービスの『KPIツリー』作成事例集」をぜひご覧ください。サブスク、EC、ゲームなどの幅広いビジネスモデルのKPIツリー作成例を掲載しています。
KPIツリーを作らない場合の問題点
【問題点1】ボトルネックとなっている問題がわからない
売上を構成する要素を洗い出さないと、売上増の妨げになっている問題に気づかないことがあります。
【問題点2】具体的な施策を考えるのが難しい
売上やアクティブユーザー数など上位の指標を分解しないままでは、「じゃあその指標を改善するために何をするの?」という具体的な施策を考えることができません。
【問題点3】施策の効果検証ができない
実行する施策に対応した指標が何か整理できていないと、正しい効果検証ができません。 例えば、ユーザー数を増やすために広告を打った場合、見るべき指標をDL数にしてしまうと自然流入や口コミでDLしたユーザーがノイズになってしまい、広告による獲得ユーザー数が分からないため、正確な効果検証ができないからです。
KPIツリーを作るメリット
KPIツリーを作ると、売上増加につながる問題の洗い出しに漏れが生じにくくなります。具体的な施策の検討・実行やそれによる効果の検証が行いやすくなり、アプリが成長しやすくなるのです。
アプリにおけるKPIツリー
では、実際にアプリの売上を構成するKPIツリーを作ってみましょう。KPIツリーを作るときの考え方のコツは、ツリーの一番上にくるゴールを構成する要素を順に分解していくことです。
例えば、売上のKPIツリーでは、売上を構成する要素をアクティブユーザーの数(xAU ((xAU…日別アクティブユーザー(DAU)や月間アクティブユーザー(MAU)など複数のアクティブユーザー数の単位をまとめてxとしています。)))と1ユーザーあたりの単価(ARPU)に分解し、さらにアクティブユーザーを新規とリピーターに分解し…という風にしてツリーを作っていきます。要素を分解する際は「モレなく、ダブりなく」を意識しましょう。
では実際にアプリにおけるKPIツリーを作っていきます。先ほどの例にも出しましたが、アプリの売上を構成する要素はアクティブユーザーの数(xAU)と1ユーザーあたりの平均単価(ARPU)に分解できます。 先にアクティブユーザーを構成する要素を洗い出してみましょう。
アクティブユーザー(xAU)の構成要素
アクティブユーザー(xAU)は新規ユーザーとリピーターに分けられます。新規ユーザー獲得の経路を洗い出すと「アプリストアからの流入」「広告からの流入」「口コミによる流入」の3つになります。リピーターの数はすでにアプリをインストールしたユーザのうち、継続しているユーザの割合で把握することができます。
ユーザーあたりの売上(ARPU)の構成要素
ARPUはアプリのビジネスモデルによって違いがあるので、ビジネスモデルごとに説明していきます。
a. 課金モデルの場合
課金モデルのアプリの場合、ARPUは課金ユーザー1人あたりの平均購入単価(ARPPU)に課金ユーザーの割合(Paid User Rate)をかけたものになります。ARPPUを構成する要素は商品の単価、一回あたり購入数、購入頻度です。
b. 表示型広告モデルの場合
無料アプリの場合、ARPUはユーザー1人あたりがアプリを使っている時(エンゲージメント)に表示されている広告単価(CPM)をかけたものになります。エンゲージメントを構成する要素はPV、アプリの滞在時間、利用頻度ですが、PVと滞在時間のどちらで広告表示がカウントされるかは広告商品によって異なるでしょう。
c. クリック型、成果型広告モデルの場合
クリック型広告を採用している無料アプリの場合、ARPUは広告1クリックあたりで発生する売上(CPC)にクリック率(CTR)をかけたものになります。クリック単価(CPC)はネットワーク広告の種類にもよりますが、一般的にDL数が多いアプリほど媒体としての価値が高く、単価も高くなります。クリック率(CTR)は広告がクリックされた数を表示回数で割ったものです。
KPIツリーで出てきた各指標の意味と施策の例
ここまでで、アプリの売上につながる指標がわかりました。ここでは最下層の各指標について簡単に説明します。
アクティブユーザー(xAU)増に関わる指標
Store(ストア流入)
アプリストア経由で獲得した新規ユーザーの数です。この指標を改善する施策はASO(App Store Optimization)と呼ばれ、ストア内検索順位の上昇によってユーザー獲得を考えます。
Advertising(広告流入)
アドネットワークやリワード広告などの活用によって新規で獲得したユーザーの数です。一番効果の高い広告の流入元を分析し、多くのユーザーが獲得できるところに広告を重点的に出しましょう。
Viral(口コミ流入)
第三者からの紹介でアプリをDLしたユーザーの数です。「口コミなんてコントロールできないよ!」と思われるかもしれませんが、Dropboxはユーザーが友人を招待すると無料で使える容量を与えるというインセンティブによってユーザーを大幅に増やしました。
Retention rate(継続率)
アプリに再訪するユーザーの割合です。初回起動からX日後にアプリを再度起動したユーザーの割合が指標になります。初回起動時のフロー改善やプッシュ通知などの施策が有効です。
顧客単価(ARPU)増に関わる指標
a. 課金モデルの指標
PUR(Paid User Rate; 課金ユーザーの割合)
全ユーザーに占める課金ユーザーの割合です。課金ユーザーにだけ使える機能を設け、よくある施策としてはアプリ起動時に無料ユーザーにおすすめするものがあります。
Price(商品単価)
ゲームアプリでのアイテムの値段やツール系(家計簿など)アプリのプレミアム機能の値段などがこれにあたります。プライシングは商品の原価、マージン、価格の変化によるユーザー心理への影響などを考慮しなければいけません。ユーザーのアプリへのエンゲージメント度合いによって単価の違う商品を作るなどが1商品あたりの単価を上げる施策になります。
Number(一度あたりの購入点数)
商品を一度に購入する数の平均です。例えばECアプリであれば、関連商品のサジェストなどが考えられる施策となります。
Frequency(購入頻度)
ユーザーが商品を購入する頻度の平均です。ECアプリであれば期間限定クーポンの発行、ゲームアプリであれば期間限定アイテムのお知らせなどが購入頻度をあげる施策になります。
b.表示型広告モデルの指標
CPM(広告単価)
Cost Per Mille (コスト・パー・ミル)の略で、表示回数 1,000 回あたりの単価を指し、インプレッション単価と呼ぶこともあります。CPMは一般的にDL数が多いアプリほど媒体としての価値が高いため、 ?単価も高くなるのです。
PV(ページビュー)
アプリを利用中に切り替わる画面の表示回数になります。例えばニュースアプリであれば、記事をユーザーの興味ごとにパーソナライズしてあげることで回遊性が高まるでしょう。
Duration(利用時間)
ユーザーのアプリ利用時間です。 例えばゲームアプリで戦闘終了後に次のイベントを発生させるなどが考えられます。
Frequency(利用頻度)
ユーザーがアプリを利用する頻度です。 期間限定のクーポン発行やプッシュ通知などが利用頻度をあげる施策になります。
c.クリック型、成果型広告モデルの指標
CPC(クリック単価)
広告のクリック1回あたりの料金です。アプリの事業者側としてCPCを上昇させるのは難しいですが、FacebookやTwitterなどの巨大SNSアプリは独自の媒体価値を持ち、自分たちでクリック単価を定義しています。表示型広告モデルでも同様に言えることですが、広告モデルのアプリで売上を伸ばすためにはユーザー数の増加を最優先に考えるべきでしょう。
PV(ページビュー)
表示型広告と同じく、アプリを利用中に切り替わる画面の表示回数になります。
Click(クリック数)
広告をクリックした回数です。ユーザーの属性を元に嗜好にあった広告を出したりするのがクリック数を増やすポピュラーな施策です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。KPIツリーを設計することでアプリの売上に関連する指標を洗い出すことができたかと思います。施策実行の際は改善したい指標を明確にし、効果検証をしてPDCAを回していきましょう!