2026.07.08
【今回のご相談】
結論、うちのアプリが決済手段を多様化するメリットがあるかどうか、判断基準がほしいです。具体的には、「アプリ外決済」をやるべきか否かです。
昨年末に話題になった「スマホ新法」「アプリ外決済」って、いろいろ情報収集したり、イベントに参加したりしていたのですが、正直「様子見」の段階のまま、弊社では棚上げになっています(同業他社の状況を見ても同じような気がしています)。今どんな感じでしょうか。(ゲームアプリ運営会社、30代男性)
2025年12月、日本のアプリ市場にとって大きな節目となる「スマートフォンにおいて特定ソフトウェアの競争促進に関する法律(以下、スマホ新法)」が施行されました。それから半年以上が経過しましたが、依然としてアプリ業界ではどこか様子見の空気が漂っています。
「外部決済を導入したアプリは、手数料の負担が軽くなったのか?」「結局、具体的にどのような対応が必要なのか?」「やりたい気持ちはあるけど、マイナスの影響はないのか?」こうした疑問を抱えながら、各社の動向を注視している事業者は多いのではないでしょうか。
今回は、アプリ外決済の最新動向(2026年7月1日時点)や、プラットフォーマー各社が現在どのようなフェーズにあるのかを整理しながら、自社にとって外部決済がいま必要な選択肢なのかを冷静に見極めるための判断基準について解説します。
スマホ新法が施行されてから、アプリ市場のルールはどのように変わり、今どのようなフェーズにあるのかでしょうか。現在の立ち位置を整理するために、まずはこれまでの主要な動きを振り返ってみましょう。
2025年12月18日にスマホ新法が施行され、日本のアプリ市場は大きな転換点を迎えました。施行直後、Apple・Googleは外部決済利用時の手数料率や新たな規約を発表。同時に、外部決済の利用を希望する事業者が直接申請するための専用フォームも公開されるなど、実務的な手続きの窓口が整備されました。
■手数料率改定、外部決済を容認
ここであらためて、スマホ新法施行当日に発表されたアプリストア関連の手数料の変化を振り返っておきましょう(【スクープ・スマホ新法】Apple・Googleが気づかれたくない?アプリ外決済手数料を「0%」にする方法の存在│Repro Journal より再掲)。
| Apple | ||||
| 施行前 | 施行後 | 施行前 | 施行後 | |
| 代替アプリストア | 不可 | 5% ※2 | 手数料なし | 手数料なし |
| 代替決済 | 不可 | 21% ※3 | 不可 ※5 | 26% ※7 |
| 外部誘導(文字列のみの誘導) | 不可 | 手数料なし | 不可 ※6 | 手数料なし |
| 外部決済(リンクアウト) | 不可 ※1 | 15% ※4 | 不可 | 20% ※8 |
| 標準となる料率(アプリ内課金) | 30% | 26% | 30% | 30% |
※1:リーダーアプリは手数料なし
※2:代替アプリストアまたは代替アプリストア経由で配布されたアプリに係る売上が対象
※3:代替決済を通じて販売された売上が対象、小規模事業者等は10%
※4:リンク後7日以内の外部Webストアでの売上が対象、小規模事業者等は10%、リーダーアプリは手数料なし
※5:非ゲームアプリは手数料26%または11%
※6:アプリ内課金を行わない消費専用アプリなら可
※7:代替決済を通じて販売された売上が対象、小規模事業者等は11%
※8:リンク後24時間以内の外部Webストアでの売上が対象、小規模事業者等は10%
アプリ事業者にとって最も注目すべきポイントとして、手数料0%になる「アプリ外からWebストアへ誘導し、デジタルアイテム・コンテンツを販売する手法」が維持されたことが挙げられます。その詳細や注意が必要な手法については【スクープ・スマホ新法】Apple・Googleが気づかれたくない?アプリ外決済手数料を「0%」にする方法の存在(Repro Journal )をご覧ください。
■遵守報告書の提出と公開
新法の施行と同じタイミングで、規制対象となる指定事業者であるApple(iTunes株式会社を含む)とGoogleが、法律への遵守状況に関する報告書を公正取引委員会へ提出。2026年2月には公正取引委員会のWebサイトで一般向けにも公表されています。
【関連リンク】(令和8年2月17日)スマホソフトウェア競争促進法に基づく遵守報告書の公表について│公正取引委員会
■Googleは新手数料体系を発表
世界各地での規制強化やEpic Gamesとの訴訟をめぐる動きを受け、2026年3月にはGoogleがGoogle Playで配信するアプリに対し、アプリ外決済の利用や、アプリ独自の代替決済システム導入を認めるとともに、世界全体での手数料体系改定を発表しました。
日本市場での新手数料適用は2026年12月31日からですが、アメリカ、欧州経済領域(EEA) 、イギリスでは2026年6月30日から新しい料金体系が適用されています。
【関連記事】Google Playのアプリ内決済手数料が実質5%引き下げ・Xがメッセージアプリをテスト - 海外アプリニュース(2026/3/6号)│Repro Journal
画像引用:AltStore、あっぷアリーナ!、Epic Games Store
スマホ新法によりサイドローディング(サードパーティによる代替アプリストアからのアプリダウンロード・インストール)が解禁された点にも触れておきましょう。
iOSでも第三者アプリストア解禁されたことにより、スマホ新法施行当日に公開された「AltStore PAL」に続き、2026年3月31日にはソフトバンクグループのBBSS(システム基盤はポルトガルのAptoide)が「あっぷアリーナ!」を公開。さらに5月1日にはEpic Gamesが 「Epic Games Store」を提供開始しています。
とはいえ、今のところ各代替アプリストアへの日本アプリの提供は消極的で、現時点で市場の慎重な姿勢に目立った変化は見られません。
実務の現場では、システム改修のコストやユーザー体験への影響といった懸念が払拭しきれないことから、多くの事業者がさらなる情報を待っている状態が続いています。その背景や課題については、私もコメントしている以下の日経新聞の記事でも詳しく触れられているので参考になさってください。
関連記事:米エピックのアプリストア、日本勢参加ゼロ スマホ新法の実効性課題(日本経済新聞 2026年5月1日)
現在、多くのアプリ事業者が立ち止まっている背景には、外部決済への切り替えに伴うシステム改修の工数や運用負荷、決済導線の変化によるユーザー離脱のリスク、既存アプリストアでの扱いに関する不安など、複数の懸念があります。
手数料数パーセントの削減というメリットが、実装の手間やUXの変化によるリスクを本当に上回るのか。その答えを自社で導き出すための具体的なシミュレーションが進まないまま、結果的に判断だけが先送りされているケースも少なくありません。
しかし、制度の枠組みが示され、複数の代替アプリストアが登場した今、これ以上の情報や他社の事例を待つのではなく、自社のビジネスモデルにおいて外部決済が本当に必要かどうか、あらためて判断を下すべきタイミングが来ています。
外部決済の導入を検討する際に整理しておきたいのは、各プラットフォーマーの実装の進捗です。2026年7月時点で、AppleとGoogleはそれぞれ異なる管理体系を提示しています。ここからは各社の最新動向と、現時点での運用の違いについて見ていきましょう。
Appleの公式規定では、スマホ新法の施行に伴い、外部決済(外部リンク)を利用する場合、標準的なアプリで15%、小規模事業者等は10%の手数料率が適用されることとなりました(リンク後7日以内の外部Webストアでの売上が対象)。
しかし、現時点ではシステム上で売り上げを自動検知する仕組みが整備されておらず、実際の管理はデベロッパー側の自己申告に委ねられているのが現状です。プラットフォーム側で取引を把握する準備がまだ完了していないため、自動化が実現するまでは、デベロッパーが自ら対象売り上げをまとめ、毎月Appleへ報告して請求書を発行してもらうフローが必要になります。
Appleの公式ドキュメント(Distributing apps in Japan)においても、取引内容をシステム間で共有するためのトークンベースAPIは、依然として「将来のアップデート(Future update)」扱いとされています。今後こうした報告手続きをシステム上で完結させるアップデートが正式に発表されるかどうかに、業界の注目が集まっています。
一方で、2026年6月のWWDC26では、公式決済の枠組みの中で他社アプリとのサブスクセット販売などを可能にするアップデートが発表されました(関連リンク:WWDC26 App Storeの最新情報│Apple)。アプリ外決済とは直接関係ありませんが、プラットフォーム側でも利便性改善への努力が行われていることは注目に値します。
Googleでは、APIを介して外部取引の完了を報告するフローがすでに用意されており、プラットフォーム側で取引状況を把握できる仕組みが組み込まれています。
実務において特に注意が必要なのは、他プラットフォームと比較しても、外部サイトへ誘導する際のリダイレクトに関する制約が厳格である点です。Googleのガイドラインでは、アプリから外部リンクで誘導した先のページ以外に、ユーザーを移動させることを厳しく制限しています。たとえば、アプリから一度中継用のキャンペーンページへ飛ばし、そこからさらに別の決済用ドメインへ再誘導するといった構成は、規約違反と判断されるリスクが高いといえます。Googleにおいては、アプリから決済完了まで、プラットフォームのルールに沿った最短かつ直接的な導線を設計することが、審査を通すうえで不可欠な条件となります。
制度や技術的な仕様の全体像が見えてきた今、自社のビジネスにおいて外部決済が「本当に今、必要なのか」を冷静に見極めるフェーズに突入しています。
最後に、導入に向けて具体的に動き出すのか、あるいは「今は別の施策を優先する」という結論を出すのか、その判断の軸となるふたつのポイントを整理します。
外部決済の導入を検討するうえでひとつの大きな基準となるのが、年間収益100万ドルのラインを超えているかどうかです。
まず、この金額に満たない場合、アプリ内決済のままでもプラットフォームへの手数料率は15%に抑えられています。そのため、このフェーズで外部決済を導入し、さらに5%の手数料を削減するためにリソースを割くことが今のアプリにとって最優先の投資といえるかは慎重に考える必要があります。もし導入工数のためにアプリの機能改善やユーザー獲得施策が後回しになってしまうのであれば、今はあえて導入を見送り、プロダクトの成長に注力するのもひとつの手です。
一方で、収益が100万ドルを超え、26%あるいは30%の手数料を支払っている状況であれば、外部決済への切り替えによる数%の手数料低減は、利益率を改善するうえで無視できないインパクトになります。この場合、中長期的な収益性を高めるための施策として、検討の優先順位は必然的に上がります。
このように、自社の収益フェーズに照らしながら、今どの施策にリソースを投じるべきかをシビアに見極める必要があります。
外部決済を導入するうえで大きな壁となるのが、アプリ内から外部へ移動する際に表示される警告画面の存在です。この画面はどうしてもユーザーの離脱要因になるため、外部へ移動するメリットをしっかりと提示しなければ、決済まで結びつきません。具体的には、「Webストアなら10%安い」「Web決済なら限定アイテムが付与される」といった、ユーザーがひと目で「こちらのほうが得だ」と直感できるような設計を行うことが大切です。
ここでカギを握るのが、SNSやLINE、メルマガといった外部チャネルの活用です。アプリ内では、外部決済への誘導方法や表現にプラットフォーム側の厳しい制約がありますが、自社のLINE公式アカウントやメルマガの活用など、規約違反にならない範囲でもユーザーに訴求を行うことはできます。
こうしたマルチチャネル戦略を実行できる体制が整っているかどうかも、導入に踏み切るかどうかを判断する際のひとつの目安になります。
スマホ新法の施行後も、各プラットフォームの技術的な対応を含め、依然として不透明な部分は残っています。こうした先が見えにくい状況だからこそ、すべての環境が整うのを待つのではなく、まずは現状のルールの範囲内で何ができるのかを探り、自社なりの知見を蓄積していく姿勢が重要になります。実際に動いて得られた結果こそが、運用の方針を固めるうえでの最も確実な判断材料になるはずです。
「アプリ外決済を導入する場合のユーザー離脱ポイントを明確にしたい」「どのように自社のアプリ外決済でマルチチャネル施策を活用できるかわからない」「一度壁打ちしてから実際のアプリ外決済導入を始めたい」など、気になる点がある方は、ぜひお気軽にReproの「アプリ集客お悩み相談会(無料)」をご活用ください。
新たなGoogleの手数料体系(画像引用:Google Play での課金方法の選択肢の拡大と手数料の引き下げ│Android Developers' Blog)
前述の通り、Googleが2026年3月に世界全体での手数料体系改定を発表しました。日本市場での適用は2026年12月31日からですが、最後にその内容にも簡単に触れておきましょう。
すでに2026年6月30日からアメリカ、欧州経済領域(EEA)、イギリスでは、新しい料金体系が適用されています。新規インストールのユーザーからの収益については、これまで最大30%だったアプリ内課金の手数料が最大25%に引き下げられました。ただし、新料金体系の導入日より前からアプリを使っている既存インストールのユーザーについては、Google公式課金システム利用時は引き続き最大30%のままです(詳細は後述)。なお、6月30日から適用の地域における課金システム利用料(※こちらも後述)は5%に設定されていますが、それ以外の地域(日本を含む)での課金システム利用料については、まだ発表されていません。
新たな手数料体系では、Google Playで配信するアプリの外部決済利用や、アプリ内への代替決済システム導入を認めるとともに、手数料を「サービス手数料」と「課金システム利用料(請求手数料)」に分離。Google Play の課金システムを使用する場合には「サービス手数料」に「課金システム利用料」が上乗せされ、Google Play以外の課金システムや外部リンク経由での取り引きでは「サービス手数料」のみが課されることになります。
▼例1:新手数料導入日以降に新規インストールしたアプリで、Google公式課金システム(アプリ内決済)を利用した手数料
・【標準アプリ】20%(サービス手数料)+5%(課金システム利用料)※=25%
・【年間収益100 万ドルまで】10%(サービス手数料)+5%(課金システム利用料)※=15%
※課金システム手数料はアメリカ・欧州のレート。日本での適用レートは未定(2026年7月現在)。
▼例2:新手数料導入日以降に新規インストールしたアプリで「アプリ外決済」を利用する場合、
・【標準アプリ】20%(サービス手数料)※
・【年間収益100 万ドルまで】10%(サービス手数料)※
※これ以外に自社アプリで利用している決済システムの手数料が必要になります。
なお、サービス手数料については、アプリの収益(100万ドルより多いか否か)や、そのユーザーが「新規(新料金体系の導入日以降に、そのユーザーが初めてGoogle Playからアプリをインストールした状態)」か、「既存(新料金体系の導入日より前に、そのユーザーが初めてインストールした状態)」かによって変動します※。さらに「Google Play Games Level Up」プログラムまたは「Apps Experience」プログラム参加のアプリは手数料が優遇されます。
(※この「初めてインストールした日」は一度きりの判定で、既存インストールのユーザーが導入日以降にアプリをアップデートしても、既存インストールの手数料のままです)
より詳しい情報や、まだ明らかになっていない日本市場での課金システム利用料については、Googleからの公式情報をご覧ください。
【関連リンク】Google Play での課金方法の選択肢の拡大と手数料の引き下げ│Android Developers' Blog
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「結局、自社アプリの決済手段をどうすべきか正解がわからない」
「自社アプリでアプリ外決済を導入するにあたり、何からはじめるべきか考えたい」
「もう少し詳しく公正取引委員会やApple、Googleの動きを検討したい」
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