現代のモバイルビジネスにおいて、「正しい分析」をせずに成長するのは不可能です。しかし、「正しい分析」とは、何を意味するのでしょうか?
スタートアップの創業者やプロダクトマネージャーは、たいていの場合、「正しい分析」に必要な知識とスキルを持ち合わせていません。その結果「正しい分析」ができず、ビジネスの成長を阻害することになってしまいます。
本記事では、モバイルアプリで分析するべき3つの要素についてご紹介します。
モバイルアプリの「正しい分析」を実現する3つの要素
始めに、ビジネスのゴールと目的を明確にしておきましょう。ここを明確にしておくことで精度の高いデータを得ることができます。ゴールと目的を明確にするためには、以下の3つの領域についての質問に対する答えを明らかにしておくといいでしょう。
1. マーケティングの分析
- 新規ユーザー、アクティブユーザー、課金ユーザーを獲得するコストを把握していますか?
- ユーザーはどの広告から流入しましたか?
- どの広告フォーマットが最も高いCV率を実現しましたか?
- 最も効率のいいトラフィック源はどこですか?また、どのチャネルが最も高いROIを実現しましたか?
2. アプリの分析
- ユーザーは、あなたのアプリをどのように使っていますか?
- ユーザーは、どの機能を使っていますか?
- DL後にアプリを使用し続けてくれるユーザーはどれだけいますか?
- ユーザーがアプリを使うのはどんな時ですか?(時間などの要素)
- アプリをよく使ってくれるユーザーはどんな人々で、アプリのどの部分を最も使ってくれていますか?
3. プッシュ通知やメールの分析
- どのプッシュ通知やメールが、リテンションやセッション数などのKPIに対して成果を上げていますか?
- ユーザーは、自動送信されたメール内の、おすすめコンテンツを読んでいますか?
- 最も開封率の高いメッセージはどれですか?
- メッセージの割引コードは使用されていますか?また、その施策は売り上げを伸ばしましたか?
これらの質問から、ファネルの最上部から最下部までを理解することが可能になります。ファネルを理解した後にKPIを整理することで、モバイルアプリの分析に必要なものを簡単に構築できます。また、ダッシュボードの構築に取りかかる際には、情報を詰め込みすぎないようにしましょう。役に立たない指標がたくさんあると、重要なKPIがすぐに埋もれてしまいます。ビジネスに必要な指標のみに集中するようにしましょう。
マーケティング施策の分析
ここ数年で、アプリの成功指標はDL数からDAUやそのリテンション、課金ユーザーのCVなどへとシフトしています。
アプリの成功のカギとなるのは、正しいオーディエンスを獲得できているか、ということです。これを実現するためには、アトリビューションの価値を理解する必要があります。次の画像では、アトリビューションを理解するためのツールを利用する利点を表しています。こうしたツールで、ユーザーあたりのCPIを、より詳しく分析できます。
アトリビューションツールを使えば、CPIなどの指標を、アプリの起動やユーザー登録、ゲームの進行状況、購入といったアプリ内のイベントと組み合わせることができます。
広告の予算を単純なCPIによって配分するよりは、アトリビューションをもとに予算を配分した方が、効率が良くなります。これは、広告予算が、CPIとユーザーの質の両方から構成されるためです。
もしも単一ネットワークに全ての予算を使うのであれば、FacebookのSDKを使うことで、同じことを部分的に実現できます。しかしSNSやwebサイトのバナー、メールキャンペーンなどとの相互プロモーションリンクといったチャネルを加えれば、モバイルマーケティングのアナリティクスにおいて、アトリビューションツールがいかに重要であるかがわかります。
マーケティングの分析で深掘りする
市場には、いくつかアトリビューションを提供してくれるサービスがあるので、価格等を考慮して利用することを推奨します。
アトリビューションプロバイダーのSDKを組み込み、どのアトリビューションの効果が高いのかを確認しましょう。データを直接見たい場合は、APIを通すことで生のフォーマットを確認できるでしょう。可視化をする場合は、「Periscope」や「Tableau」などのサービスを使いましょう。
この市場は「Appsflyer」が牽引しており、「Adjust」がそれに続きます。最近では「Branch」が、モバイルビジネスにとっては不可欠なチャネルである、「Facebook」のモバイル測定パートナーとして認証されました。当然のことですが、サービスごとに価格モデルやプランは異なり、アドフラウドの検知機能やディープリンク、アナリティクスといった追加機能でも変わってきます。
無料で使えるツールに「Firebase」が挙げられます。しかし、現在GoogleはFacebook広告とはパートナーシップを持っていないため、それらのネットワーク(と他のいくつか)からのインストールにはアトリビューションが付かず、「オーガニック」のトラフィックとして分類されてしまいます。
アプリの分析
モバイルアプリを成功させるためには、アプリの長所と短所に沿った戦略を時間をかけてでも、作りましょう。 また、アプリをセグメントに対してカスタマイズするという手もあります。フィットネスアプリで男女に分けてオンボーディングのプロセスを作るのであれば、男性向けでは筋力の増大に、女性向けでは体重の減少にフォーカスするといいでしょう。もしくは、国ごとに異なる価格設定を行ったり、使用頻度が高いユーザーには体験期間を延長したりするのもいいでしょう。
戦略をアプリに合わせるにしろ、アプリをカスタマイズするにしろ、アプリを分析して、ユーザーがアプリ内でどのような行動を取っているのかを調べる必要があります。
次は、2種類のアプリの分析方法をご紹介します。
1. 既製の分析ツールを使用する
分析ツールを使う利点として、設定や可視化が簡単で、導入してすぐに活用できるという点が挙げられます。 また、専門のデータアナリストがいなくても使うことができます。
Amplitudeのダッシュボード
分析ツールはとても便利ですが、見える数字に絶対的な信頼をおけない場合があることが欠点です。どのようなアルゴリズムでその指標が計算されているのか明確化するのが難しい場合があります。 もう1つの欠点は、ほとんどの無料プランでは、生のユーザーデータにはアクセスできなかったり、アトリビューションのような他のデータソースと組み合わせることができなかったりすることです。
2. 自社で分析を行う
独自での分析を行うためのシステム構築は簡単ではありませんが、データ収集や細かい設定をカスタマイズできるので、データの信頼性を上げることが可能です。
他にも以下のような利点があります。
- 収集したデータに対して、より詳細に理解できる
- 全てのデータを所有できる
- データの使用と分析が自由にできる
- データソースの接続が柔軟に行える
また、ビジネスが大きくなるにつれ、分析ツールを使用するよりもコストが低くなるという利点もあります。
ニューヨークのスタートアップ「AppAgent」がGoogleのFirebase、Big Qurery、Data Studioを用いて作成したダッシュボード
ただし、独自での分析は時間と資金がかかります。なので、製品開発に集中している小規模なスタートアップでは、分析ツールを使用することを推奨します。
メッセージの分析
メッセージの分析は、モバイルマーケティングオートメーションと呼ばれることもあります。これは、プッシュ通知やメール、アプリ内メッセージ、SMSといったものを通して、アプリの既存ユーザーとのコミュニケーションを管理するシステムです。
新規ユーザーの獲得は離脱ユーザー呼び戻しよりもコストが95%もかかることが実証されています。価値の高いユーザーをつなぎとめておくことで予算を節約できるため、離脱ユーザーの呼び戻しを正しく行うことを優先すべきです。
MAツールは、キャンペーンの設定や分析が可能なものが多く、リテンションやエンゲージメント、CVを増加させたり、チャーンを防ぐこともできます。 独自のプッシュ通知サーバーやメール配信を立ち上げるのであれば、コア機能に加える形で、メッセージの分析機能を利用することを強く推奨します。
Braze(元Appboy)の automated communication canvas画面
メッセージの分析を利用してより良いメッセージを
MAツールの目的は、以下にあげたものになります。
- 簡潔なオンボーディング
- プロダクトの機能の説明
- エンゲージメントの向上
- プレミアム機能へのアップセル
- プロモーションの提供
- チャーンの減少
分析ツールを利用するのであれば、MAツールはすでに含まれている可能性が高いので新たに作成する必要はありません。
全員からデータが見えるようにする
「Home」の成長マネージャーであるPatrik Winkler氏は、マーケティングチームの全員が簡単にデータにアクセスし、分析できるようにしなくてはならないと語っています。そうすることでデータの見過ごしを無くし、全員で重要な決断を行うことが可能になるからです。
最後に
今回は、モバイルアプリの分析方法について解説しました。この記事を参考に「正しい分析」を行い、マーケティングを成功させましょう。
mparticle.comによる分析&マーケティングツールまとめ
この記事は、APP AGENT社のブログ"THE 3 ESSENTIAL PILLARS OF MOBILE ANALYTICS"を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on APP AGENT in English under the permission from the author.