企業経営・ビジネスの継続的な成長を実現するためには、適切な「KGI」「KPI」の設定を欠かすことはできません。KGIからKPIを逆算して正しく運用することで、施策の効率的な立案や優先度設定、効果測定ができるようになり、PDCAサイクルが回っていくからです。
本記事では、前半でKGI、KPIの意味をわかりやすく解説し、後半ではより実践的にKPIの設定方法、KPIツリーの作成術について触れていきます。
KGI・KPIとは?言葉の意味と定義
KGIとは、経営・ビジネスの最終目標の達成度合いを測るための定量指標です。具体的には売上高や成約数、利益率などが当てはまります。「Key Goal Indicator(キー・ゴール・インジケーター)」の略語で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。
例えば、売上高をKGIとし、その目標値を200億円と定めたとします。この場合、売上高が200億円以上であればKGIの目標を達成しており、その企業の経営が健全であると判断できるわけです。
一方、KPIとは、KGIを達成するための各プロセスが適切に実施されているかどうかを定量的に評価するための指標です。「Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジケーター)」の略であり、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
KPIとなり得る指標はビジネスモデルや業務に応じて無数にあるため、適切な指標を選択することが重要です。
よりわかりやすく表現するなら、KGIとは「ビジネスのゴールを数値化したもの」、KPIとは「KGIに影響を与える要素を数値化したもの」「KGIを業務上でコントロールできる粒度までブレイクダウンしたもの」といえるでしょう。
■KGIとKPIの定義と関係性(KPIツリー)
KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)の意味と関係性をわかりやすく示したのが上の図です。KPIはKGIに影響を与え、KPIの達成によってKGIが達成されるように設計する必要があります。
代表的なKPIとしては、Webマーケティングにおけるユニークユーザー数(UU数)、ページビュー数(PV数)、コンバージョン率(CVR)、アプリマーケティングにおけるMAU(月間アクティブユーザー数)、継続率、課金率などが挙げられます。
なお、KPIは多層構造になるのが一般的であるため、KPIツリー(KGI・KPIをブレイクダウンし、樹形図として表現したもの)を作成するのがおすすめです。作成方法や事例を詳しく知りたい方は「【最新版】EC・Web&アプリサービスの『KPIツリー』作成事例集」を参考にしてください。
KGIとKPIの違い
KPIは「過程」を見る指標なのに対して、KGIは「結果」を見る指標と考えるのがいいでしょう。例えばアプリマーケティングにおいて、売上をKGIとした場合、売上を変動させる要因となる「アクティブユーザーの数」や「課金率」をKPIとしてモニタリングするというわけです。
このKGIとKPIの関係を明確にするためには、KPIツリーを作成するのが便利。KPIツリーの作成手順や考え方は下記の記事で解説しているので、チェックしてみましょう。アプリ事業をメインに紹介していますが、考え方自体はWebマーケティングをはじめ、あらゆるビジネスモデルに横展開できます。
関連記事:アプリ事業のKPIツリー!具体例を用いて設計方法を解説
KGIとKPIの意味・違いのまとめ
- KGI:「Key Goal Indicator(キー・ゴール・インジケーター)」の略語。経営・ビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標
- KPI:「Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジケーター)」の略語。KGIを業務プロセスで分解した、業務の過程を評価するための指標
KSFやOKRとの関係
KGIやKPIを活用する際に関連する用語としてよく登場するのが「KSF」と「OKR」という言葉です。それぞれ以下のような意味を持っており、しっかりと区別して理解する必要があるので覚えておきましょう。
KSF(Key Success Factor)
「Key Success Factor」の略で日本語では「重要成功要因」や「重要成功要因」と訳されます。KGIやKPIが定量指標であるのに対して、KSFはKGIやKPIを達成するための活動や要因を定性的に示すものといえます。例えば、KPIとしてアプリストアへのオーガニック流入数を設定するのであれば、KSFにはASO対策やクリエイティブ改善施策が挙げられます。
OKR(Objectives and Key Results)
OKRは「Objectives and Key Results」の略語です。日本語では「達成目標と主要な成果」「目標と成果指標」などと訳されます。Google社やFacebook(現・Meta)社など、米国の有名企業が採用して成果を上げたことで注目され、日本でも活用されるようになりました。
OKRはKGI・KPIとは異なり、組織や個人の目標設定・管理手法のひとつとして使用されるのが一般的。定性的な組織・個人の目標である「Objectives」、Objectivesを達成するための定量的な指標である「Key Results」で構成されます。人事評価の文脈で活用されるケースが多いでしょう。
KGI・KPIを設定する際のコツと注意点
KPIはKGIが因数分解されたものなので、大前提として最初に適切なKGIが設定されている必要があります。この前提を守ったうえで、以下の点に留意してKGI・KPIを設定していきます。
【1】必ず定量化できる指標にする
KGIもKPIも必ず数値としてモニタリングできるものでなければいけません。そうでなければ、実際に達成できているのかどうか、メンバーの間で認識のズレが生じ、話が噛み合わなくなるからです。
例えば、「ユーザーにより満足してもらうアプリにしたい」といった目標の場合、「ユーザーの満足 =アプリストアレビューの平均評価点数」など定量的に評価できる指標にすることでモニタリングや施策の効果検証が行いやすくなります。
【2】KGIと結びついたKPIを設定する
KPIがKGIと結びついていなければ、KPIを達成していたとしてもビジネスとして成功しません。KPIにおける目標数値をクリアしていく先にKGIの達成があるようにKPIを設計しましょう。
例えば「売上」がKGIのアプリの場合、アプリの滞在時間が長くなっても、売上に影響がないのであれば「滞在時間」というKPIは適切な指標であるとは言えません。
このような事態を避けるために有用なのが「KPIツリー」です。KGIを構成する要素を段階的に分解して、施策を実行可能になるまでレベルを落としたKPIの洗い出しをすることができます。
【3】施策で改善可能なKPIにする
定量的なKPIを設定しても施策によって改善可能でなければ、モニタリングする意味がありません。KPIが施策と結びついていれば、施策の成果を定期的に検証できるので効果的です。必ず実行する施策とセットで考えましょう。
KGI・KPIの具体的な設定方法
ここからは代表的なKGI・KPIの設定方法についてご紹介します。アプリ事業をピックアップしていますが、基本的な考え方はあらゆるビジネスモデルで同様です。より具体的な事業形態別KGI・KPI設定法をチェックしたい人は「【最新版】EC・Web&アプリサービスの『KPIツリー』作成事例集」をぜひご覧ください。Web・アプリを横断して10業種以上のKGI・KPI設定例を紹介しています。
継続率
「継続率」を分析することで、どれくらいのユーザーがアプリを継続して使い続けているのか確認することができます。「Googleアナリティクス」など他のアクセス解析ツールではコホート分析ともいいます。継続率を確認することができれば、1ユーザーあたりの売上を明確にしたり、ROIを考慮したユーザー獲得コストの最適化を行ったりすることが可能になります。
継続率を分析する詳しいメリットや、運用方法については下記の記事をご覧ください。
アプリ成長のカギは継続率! (リテンション分析を用いたアプリのグロースハック①)
継続率を分析する重要性を理解しており、すでに分析を行ってはいるけれども、自社アプリの継続率が実際のところ高いのか低いのかわからないという人も多いでしょう。アプリにおけるリテンション率の指標を徹底解説!では、継続率のベンチマークや、継続率を高くする方法を紹介しています。
新規流入
既存ユーザーのみでは売上を伸ばすにも限界があるため、新規ユーザーを獲得することも売上を増やすためには重要です。新規ユーザーを獲得する方法はストア流入と広告流入、口コミ流入の3つが考えられます。
ストア流入
ASO (アプリストア最適化) を行うことでアプリストアからの流入 (ダウンロード数) を増やすことができます。ASOの重要性や、方法など詳しくはASO(アプリストア最適化)とは?実施の必要性から手順を詳細解説をご覧ください
広告流入
SNSなどの広告プラットフォームを活用するのであれば、より多くの新規ユーザーにアプリのDLを働きかけることが可能になります。
口コミ流入
ゲームスタイル研究所による調査では、アプリをダウンロードする際、友人や知人、家族の評判・口コミを参考にする人がおよそ4割いることがわかっています。特にゲームアプリ分野ではコミュニティマネジメントも重要視することが大切です。
KGI・KPIの正しい設計が経営・ビジネスを成功へと導く
正しいKGI・KPIの設計は、企業経営、ビジネスの成長にとって非常に大きな役割を担っています。ビジネスの最終目標であるKGIを社員に明示し、そのKGIを達成するためのKPIを設定することで、社員全員がどのように業務に取り組み、どの数値を改善すればよいのかが明確になるからです。
しかも、正しくKPIが設定してあれば、社員は自分の目の前にあるKPIを達成することで、KGIの達成に貢献することになります。正しいKGI・KPI設計は、企業の意思統一や戦略の実現へとつながっていくのです。
設定すべきKGI、KPIは企業の形態やビジネスモデルによって多種多様ですが、基本的な考え方は本記事で解説したものと同じです。自社の状況に当てはめながら、適切かつ効果的なKGI・KPI設計を実現してください。
EC・Web&アプリサービスの「KPIツリー」作成事例集
様々なWeb、アプリビジネスのKGIを適切なKPIへとブレイクダウンし、KPIツリーを作成した事例集です。KPIの設定に悩んでいる方はぜひご覧ください。ビジネスモデルごとに特徴的な課題の改善方法の紹介しているので、成果改善に直結するはずです。