有名アプリ【14事例】に学ぶ 離脱を“ゼロ”にするモバイルアプリのオンボーディング

Repro Journal編集部
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2025.06.19
有名アプリ【14事例】に学ぶ 離脱を“ゼロ”にするモバイルアプリのオンボーディング

目次

初めての利用するアプリでも、多くの人がすぐに使い方を理解できるのは驚くべきことです。まるで魔法のよう。もちろん、そこに本当の魔法があるわけではありません。それは優れたUXとオンボーディングの成果です。
オンボーディングは現代版の取扱説明書。ユーザーがアプリを使いこなすための準備を整える役割を果たします。取扱説明書に様々なスタイルがあるように、オンボーディングにもいくつかの種類があります。本記事ではオンボーディングのタイプを詳しく見ていきます。

この記事は、DECODEのブログ “4 types of mobile app onboarding to know about” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。

モバイルアプリのオンボーディング ~その意味と重要性~

オンボーディングはアプリにおけるウェルカムシーケンス。何も知らない状態から、自信を持ってアプリを使いこなせるようになるまで、ユーザーをできるだけ短時間で導くことを目的とします。

そしてオンボーディングは、「エデュケーション」「セットアップ」「パーソナライズ」の3つの側面をカバーするものです。

【図】アプリのオンボーディングの目的画像引用:DECODE

エデュケーションは、ユーザーにアプリの使い方を理解させることが目的です。基本操作を案内するインタラクティブなチュートリアルのような形式もあれば、アプリのメリットを簡単に紹介してユーザーの興味を引き出すようなシンプルな形式もあります。

セットアップは、アカウントを作成に必要な情報を収集するプロセス。ここで重要なのは、このプロセスをできるだけ楽しく魅力的なものにすることです。そしてパーソナライズは、ユーザーに合わせてアプリ体験を調整することで、アプリの価値をより高めることが目的。ユーザーの好みを尋ねたり、通知をオンにしたり、UIをカスタマイズしたりすることが含まれます。

【図】「Wally」のオンボーディング画面画像引用:Wally

オンボーディングは、アプリのリテンションレート(継続率)やエンゲージメントを向上させるための基本的な戦略。成功すれば、特に重要な初週から数週間で、ユーザーに対してポジティブな印象を与えられます。オンボーディングがなければ、ユーザーは困惑し、フラストレーションを感じるでしょう。そして最終的にはアプリをアンインストールしてしまいます(実際に80%のユーザーがそうしています)。

プログレッシブ・オンボーディング

その名の通り、「プログレッシブ・オンボーディング」は、ユーザーがアプリを操作する過程で徐々に展開されていくタイプのオンボーディングです。一般的には、UI上の機能を説明したり強調したりするポップアップを利用して行われます。

【図】「プログレッシブ・オンボーディング」のサンプル画面画像引用:Usability Geek

プログレッシブ・オンボーディングの主なメリットは、ユーザーに過度な負担が発生しないことです。新しい情報が、捜査の過程で適切な文脈で表示されるため、ユーザーはその場で試すことができます。また、アプリをすぐに使い始めるのを妨げる障壁を最小限に抑えることもできます。

プログレッシブ・オンボーディングは、「段階的なエンゲージメント(gradual engagement)」の優れた例であり、これはGoogleのプロダクトディレクターであるルーク・ウロブルースキーが提唱する原則です。彼はその利点を次のように説明しています。

段階的なエンゲージメントによって、モバイルアプリが何をするものなのか、なぜユーザーにとって重要なのかを、すぐに触れてもらうことで伝えることができます。これにより、ダウンロードを獲得するための多大な努力を活かすことができ、サインアップの要求によって潜在的なユーザーの75%を遠ざけてしまうような事態を避けられます。

プログレッシブ・オンボーディングは、「実際に操作しながら学べる」点で優れています。National Training Laboratoryによる調査など、数多くの研究によって、実践を通じた学習は情報の保持率を75%まで高めることが示されています(これに対し、読書による保持率はわずか10%に止まります)。

【図】「Learning Pyramid」のイラスト画像引用:Education Corner

これは、人々がガジェットを購入した際に取扱説明書をほとんど読まない理由でもあります。多くの場合、すぐに製品を使い始めてしまうのです。

プログレッシブ・オンボーディングは、隠れた要素や一般的でない機能を持つ複雑なアプリに最も適しています。このようなケースでは、インタラクティブなチュートリアルが特に効果を発揮します。例えば「Fortune City」のオンボーディングシーケンスは、その優れた例です。

【図】「Fortune City」のオンボーディング画面画像引用:Fortune City

ユーザーに基本操作をステップ・バイ・ステップで案内することは、特にモバイルゲームやFortune Cityのようなゲーミフィケーション要素の強いアプリにおいて非常に有効です。これらのアプリは、慣れるのに時間がかかる独自の機能や要素を導入していることが多いからです。

また、動画編集アプリのようにツールとして機能するアプリにも、プログレッシブ・オンボーディングは効果的です。例えば、ストップモーションアニメーションアプリ「Stop Motion Studio」の事例が挙げられます。

【図】「Stop Motion Studio」のオンボーディング画面画像引用:Stop Motion Studio

このアプリでは、ジェスチャー操作やその他のヒントを示す便利なツールチップが表示されます。さらに、ユーザーが真似できる短い動画クリップも含まれています。

重要なのは、こうしたポップアップ画面がなければ、一部のユーザーがジェスチャー操作に気づかない可能性があることです。実際、「Timely」のように複雑で一般的ではないジェスチャーを採用しているアプリも、プログレッシブ・オンボーディングとの相性が非常に良い例です。

【図】「Timely」のオンボーディング画面画像引用:Smashing Magazine

ドキュメントスキャナーアプリ「CamScanner」は、複数のプログレッシブ手法を用いたオンボーディングシーケンスの優れた例です。このアプリでは、特定の機能を説明したり、重要な機能へと誘導したりするラベルやツールチップが使われています。

【図】「CamScanner」のオンボーディング画面画像引用:CamScanner

さらに、CamScannerで特筆すべき点は、デモコンテンツを提供していることです。ユーザーが手元にスキャンする書類を持っていなくても、スキャンの手順を実際に練習できるようになっています。

【図】「CamScanner」のデモコンテンツ画像引用:CamScanner

デモコンテンツを提供することで、CamScannerアプリは、ユーザーがオンボーディングシーケンスを完了できない理由や障壁を取り除いています。

「Todoist」アプリもまた、デモコンテンツを効果的に活用しており、空の状態を防ぐのにも役立っています。

【図】「Todoist」のオンボーディング画面画像引用:Todoist

プログレッシブ・オンボーディングには実に様々な手法があります。だからこそ、ユーザー体験を新鮮で魅力的なものにしたい場合に最適なアプローチといえるのです。

機能重視型オンボーディング

「機能重視型オンボーディング」は、アプリの機能を中心に据えたアプローチです。スライドショー形式で表示されることが多く、アプリの中核的な機能や、その使い方、活用する価値を紹介していきます。

【図】「機能重視型オンボーディング」のサンプル画像引用:Smashing Magazine

機能重視型オンボーディングは、複雑または独自の機能を売りにしているアプリに非常に適しています。また、扱うタスクが難しいアプリにも効果的な選択肢となります。

良い例として、プロ向けカメラアプリ「Halide Mark II」が挙げられます。このアプリは一眼レフカメラを模した設計であり、使用による直接的な利益よりも、複雑な機能そのものを強みとしています。そのため、オンボーディングではこれらの機能に重点を置いています。

特に印象的なのは、Halideアプリのオンボーディングが取扱説明書のような形式になっている点です。物理的な小冊子をめくるかのようなアニメーションが取り入れられており、線画イラストもその効果を高めています。

【図】「Halide Mark II」のオンボーディング画面画像引用:Halide Mark II

機能重視型オンボーディングで重要なのは、コア機能のみに焦点を当てることです。些末な機能まで紹介してしまうと、逆効果になる可能性があります。また、あまりに単純な機能を強調すると、一部のユーザーは見下されたように感じるかもしれません。最悪の場合、時間の無駄と受け取られてしまいます。

一般的な目安としては、オンボーディングで紹介する機能は35個以内に収めるのが理想です。それ以上の機能については、必要に応じてアプリ内のツールチップなどであとから案内する方法もあります。

 Slack」はこの点で良い例です。多機能で優れたアプリであることは周知の事実ですが、オンボーディングでは最も重要な機能だけに絞って紹介しています。

【図】 「Slack」のオンボーディング画面画像引用:UX Booth

機能重視型オンボーディングの最終的な目的は、ユーザーに次のアクションを促すことにあります。例えば、アプリを実際に使い始めてもらうことや、アカウント登録をしてもらうことです。その目標に向けてオンボーディング全体を設計する必要があります。具体例として、パーソナルファイナンスアプリ「Wally」のオンボーディングが挙げましょう。

【図】「Wally」のオンボーディング画面画像引用:Wally

このアプリが優れているのは、機能の説明からメールアドレスの入力へと自然に移行している点です。また、Wallyアプリでは、オンボーディングの冒頭とサインアップを促す前のタイミングでプロモーションを挿入し、ユーザーにとっての魅力を高めています。

機能重視型オンボーディングは「退屈」あるいは「受動的」と見なされがちですが、必ずしもそうである必要はありません。Halideアプリのように、細かな演出を加えることで、オンボーディングを楽しく魅力的な体験にすることができます。

メリット重視型オンボーディング

「メリット重視型オンボーディング」は、機能重視型のアプローチと似ていますが、焦点を当てるのは「機能そのもの」ではなく「その機能によって得られるメリット」です。

【図】「メリット重視型オンボーディング」のサンプル画像引用:Alite International

 メリット重視型オンボーディングは、ユーザーの感情に訴えかけることができるため、非常に効果的です。ただし、覚えておくべき重要なポイントがあります 。

人々はあなたのアプリが“何をするか”には関心がありません。彼らが関心を持つのは、“それが自分に何をしてくれるか”だけです。

例えば「Uber」アプリを見てみましょう。非常に人気があるのは、車を購入して運転するよりもはるかに便利で安価だから。人々がこのアプリを好むのは、そこから得られるメリットが大きいからです。

機能重視型オンボーディングと同様に、紹介するのは3〜5個の主要なメリット、またはバリュープロポジションのみに絞るべきです。

バリュープロポジションとは、あなたのアプリが持つユニークかつ説得力のある価値であり、ユーザーの生活を変える力を持つコンセプトです。この核となる価値を明確にしたうえで、オンボーディングの中心に据えるのです。

【図】バリュープロポジションを図解したイラスト画像引用:DECODE

「Evernote」のオンボーディングは、その好例です。たった3枚のシンプルなスライドで、「どこでもメモが取れる」というアプリのバリュープロポジションを明確に伝えています。

【図】「Evernote」のオンボーディング画面画像引用:The Manifest | Medium

もうひとつの好例が「Trip.com」です。短い文章でコアとなるメリットを的確に伝えており、まさにお手本のようなオンボーディングです。見てわかる通り、内容はわかりやすく、要点にもすぐにたどり着ける構成になっています。

【図】「Trip.com」のオンボーディング画面画像引用:UX Cam

これこそが目指すべき簡潔さのレベルです。もしコアとなるメリットを説明するのに複数の段落や画面が必要なのであれば、それは本当の意味での「コアメリット」ではないのです。もっと凝縮しなければなりません。

もちろん、メリットを直接伝えるだけが、メリット重視型オンボーディングではありません。少し工夫を加えることで、より魅力的に伝えることも可能です。

その一例として、予算管理アプリ「You Need a Budget(YNAB)」による、ユニークで興味深いアプローチがあります。下の画像を見てください。

【図】「You Need a Budget(YNAB)」のオンボーディング画面画像引用:YNAB

メリットを直接伝えるのではなく、「YNAB」アプリでは実際のユーザーからの体験談を活用しています。このようなソーシャルプルーフは非常に効果的です。なぜなら、心理的に「自分にもできる」という感覚をユーザーに与えるからです。普通の人ができたなら、自分にもできるはずだと感じさせます。

最終的に、オンボーディングの設計には大きな自由度があります。ユーザーを惹きつけ、関心を持たせ続けることができるのであれば、どんな手法でも試してみる価値があります。

アカウント設定型オンボーディング

オンボーディングの重要な役割のひとつは、ユーザーがアカウントを作成するように促すことです。、アカウント登録はユーザーにとって大きなハードルだからです。誰もがフォームに情報を入力することを好むわけではありません。

ちなみに、これは単なる経験則ではありません。数多くの調査や分析により、サインアップフォームがユーザー離脱の最大要因のひとつであることが明らかになっています。

【図】アカウントの設定の段階で離脱するユーザーの割合を示した図画像引用:Piwik

そのため、オンボーディングではアカウント設定を「簡単に」「短く」「楽しく」する必要があります。そのすべてを満たすのが理想です。この点で特に優れているのが、「Duolingo」です。アカウント作成のプロセスにゲーミフィケーションを取り入れることで、ユーザーに楽しい体験を提供しています。

【図】「Duolingo」のオンボーディング画面画像引用:Duolingo

この例には多くの有用なポイントが詰まっています。まず、Duolingoでは長いフォームを一括で表示するのではなく、複数の小さなステップに分割しています。これにより、手続きが煩雑に感じられず、取り組みやすくなります。

次に注目すべきはプログレスバーの活用です。これは、ユーザーが今どの段階にいるのかを視覚的に把握できるようにするだけでなく、「まだ終わっていない作業がある」という心理的サインにもなります。この心理には「ツァイガルニク効果」というものが関係しています。「未完了の作業は、完了するまで頭から離れない」という心理現象で、ユーザーに自然と完了へのモチベーションを与えるのです。

クイズ形式のインタラクティブ要素が含まれている点も優れています。このような工夫を施すことで、アカウント登録のプロセス自体を楽しく魅力的な体験に変えることができているのです。全体の演出に明るいグラフィックやかわいいマスコットを用いて、シーケンス全体を親しみやすくしているのもポイントです。

もうひとつの注目すべき例、「Coinbase」を見てみましょう。

【図】「Coinbase」のオンボーディング画面画像引用:Coinbase

このアプリが優れている点は、各アカウント作成ステップにかかる所要時間の目安を表示していることです。これにより、「それほど時間がかからない」という印象をユーザーに与えることができ、完了まで進めてもらいやすくなります。

また、「金融規制により必須」といった注記を加えることも非常に効果的です。これはロバート・B・チャルディーニの著書「影響力の武器」でも示されているように、「理由を述べること」は人の納得や協力を引き出す上で非常に有効だからです。

最後の例として、SNSの「Strava」を見てみましょう。

【図】「Strava」のオンボーディング画面画像引用:UX Cam

Stravaのアカウント作成プロセスで特に優れているのは、ユーザーに情報提供を求めるたびに、その理由や利点を丁寧に説明している点です。例えば、位置情報サービスの有効化を求める際には、それをオンにすることで得られるメリットを明示しています。これは、ユーザーとの信頼関係を築くうえでとても効果的な方法です。

また、無料トライアルの開始やメーリングリストへの登録といったアップセル要素も、アカウント作成の流れの中に自然に組み込まれており、違和感なく処理されています。このような要素は一般的に摩擦を生むリスクがありますが、Stravaでは非常に洗練された形で実装されており、ユーザー体験を損なうことなく行われています。

これらの事例が示しているように、アカウント作成は必ずしもユーザーにとって負担となる必要はありません。作業的な手続きではなく、気持ちの良い会話のような体験にすることで、スムーズに進めてもらうことが可能になります。

アプリのオンボーディングをより洗練させるために

この記事が、アプリのオンボーディングにどのように取り組むべきかを検討するヒントになれば幸いです。そして、ぜひおすすめしたいのはオンボーディングの改善に、実際に活用してみることです。

読んで理解するだけでは不十分です。実施のプロジェクトでこれらの原則を活用することで、さらに多くの学びを得ることができるでしょう。自社のアプリの価値に存在する伸びしろやコアな価値を再認識するきっかけになるかもしれません。

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