自社EC×実店舗でLTV最大化を目指す。ピーチ・ジョンが考えるこれからの自社ECの役割

Repro Journal編集部
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2020.02.29
自社EC×実店舗でLTV最大化を目指す。ピーチ・ジョンが考えるこれからの自社ECの役割

目次

Amazonなどの大手モール型ECサイトの台頭によって、多くのECサイトが苦戦を強いられている中で、独自のEC・オムニチャネル戦略で顧客の感動を追求している企業がある。

デザイン性の高い女性向け下着販売会社「ピーチ・ジョン」は、自社ECを「使いやすく、かつ楽しい買い物体験ができる場」であると捉え、実店舗とwebをクロスさせてLTV(顧客生涯価値)を向上させることに注力している。

本記事では、ピーチ・ジョン カスタマーデライト向上インフラ推進課 課長である宮澤氏が、同社の顧客感動追求のための取り組みと、自社ECサイトの今後の役割について語った。

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カタログ通販からスタートし、時代に合わせてビジネスモデルを変化させてきた

――宮澤さんは約20年前に入社されたそうですが、ピーチ・ジョンのビジネスモデルはどのような変遷をとげてきましたか?

宮澤 私が入社した2001年は、カタログ通販が全盛期の時代。カタログを発送すると、FAXや電話が殺到し、数日後にハガキがたくさん届くという状態でした。

当時のwebサイトには、カタログ番号で注文する機能しかないという非常にシンプルな設計。

この20年間で、カタログからweb、PCから携帯、携帯からスマホへと、大きな変革期が何度も訪れ、会社の事業も大きく変化してきました。

現在では、お客様がECサイトを見て、ピーチ・ジョンを初めて知るというブランド体験も増えています。

デバイスは、PCとスマホで比較すると、スマホが約85%と圧倒的に多いです。

昨年、アプリをリニューアルし、アプリからの売上も増えていますが、現状はwebの売上の方が大きいです。

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――紙からwebへ、かなり大きな変化があったのですね。スマホも浸透し、デバイスの変化は一旦落ち着いたと思うのですが、現在はどのような戦略に注力しているフェーズなのでしょうか?

宮澤 現在は実店舗と自社ECを基軸にオムニチャネル化を進めています。

時代の流れと共にお客様の買い物行動はどんどん変化していて、例えば、お客様が来店前にwebで在庫を確認することなんかは当たり前になってきています。こうしたお客様の買い物行動の変化は、webスタッフはもちろん店舗スタッフも知っておく必要があります。

しかし、どうしても部署ごとに店舗であれば店舗、webであればwebの売上を追うことに意識が集中してしまい、それぞれの連携が薄くなってしまう傾向があり、これはよくないなと。

そこで、分断された店舗とwebをつなぐために「カスタマーデライト向上インフラ推進部」を2017年に立ち上げました。

店舗とwebの壁を超え、顧客感動を最大化するための専門部隊

――カスタマーデライト向上インフラ推進部はどのようなミッションを持ったチームなのでしょうか?

宮澤 カスタマーデライト向上インフラ推進部は、「カスタマーデライト(顧客感動)」を生み出すために、社内のインフラを整える目的で生まれました。

ここでいうインフラはシステムのような意味合いではなく、人や作業などを含めた環境すべてを指します。こうしたインフラを整備してこそ、現場は新しいことに安心して取り組むことができます。

たとえば、なにかプロジェクトを始めるときのテストは、必ず当部門がテスト結果の集計や分析、マニュアル化の落とし込みまで担当します。

これまでの20年間、社内で様々な業務を経験してきたのが活きているのを感じますね。

――長くキャリアを積まれてきた宮澤さんならではの強みですね。部署としては、どんなKPIを追っているのでしょうか?

宮澤 当部は部署単体でのKPIをもたず、販売側のKPIを達成することを優先しています。売上をアップするために、お客様は何に喜んでくれるか、そのためにはどうインフラを整えていくべきかという考えで動いています。

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――カスタマーデライトを成功させるために、課題だと感じている部分はありますか?

宮澤 様々な部署に全体最適を考えてもらうために、必要だと感じているのは「適切な評価」です。

たとえば、店舗からwebに送客して、最終的にwebで購入された場合は、web部門の売上になります。店舗とwebは別々に目標を設定されているため、店舗スタッフにとっては積極的に動きにくい部分もある。

頭ではわかっても、実感をもって理解してもらうことはなかなか難しいと感じています。

こうした背景から、去年はひとつの施策を試しました。

お客様が来店した際、店舗に在庫がなくwebに在庫があった場合、web注文するときに送料が無料になるクーポンを渡すという試みです。その結果を、店舗スタッフへの評価に活かせないかと考えました。

実際に、4店舗で4ヶ月間テストを行い、クーポンの種類を店舗ごとに変えて、計測もしました。

実際の評価に落とし込むところまでには至っていませんが、都道府県や立地によってクーポンの使われ方が違うことがわかりました。

――女性下着という商材で、オムニチャネル化するメリットはどのようなものでしょうか?

宮澤 商材の特徴として、店舗でフィッティングすることでお客様の満足度は上がることがわかっています。

実は、適正サイズではない下着をつけているお客様もおり、フィッティングすることで本来のサイズを知って、シルエットが変わることに喜ばれることは非常に多いです。

当社では、NPS調査(顧客満足度)を5年ほど実施しており、フィッティングを体験したお客様は満足度が高いという結果が出ています。

さらに、NPS数値が高いお客様ほどピーチ・ジョンとの付き合いが長くなり、付き合いが長くなればwebでの購買が進み、クチコミを入力する件数も多いです。

このように、NPS調査は短期的な売上に直結はしないものの、長期的に非常に影響力のある数値です。

こうした結果から、なるべく多くのお客様にフィッティングを体験してほしいと思っていますが、全国の店舗数は約40店のため、地域によっては近くにお店がない場合があります。そういったお客様にも気軽に試着をしていただこうと、「初回返送料無料(試着してサイズが合わない場合の返送料が無料)」というサービスも始めました。

店舗とwebと両方のチャネルを使ってもらうことでLTV(顧客生涯価値)も上がるという結果も出ていて、オムニチャネル化するメリットは非常に大きいと考えています。

これからの自社ECの役割は「世界観を伝えること」

――Amazonなどの大手のショッピングモール型ECが台頭するなか、自社ECサイトには今後どのような役割が求められると思いますか?

宮澤 自社ECの強みは、下着の知識など自社コンテンツをお客様に届けられること。ショッピングモール型ECでは、想いやコンセプトまで伝えることは難しいので、そこを伝えていくのが自社ECの役割かなと。

大手のショッピングモールサイトは買いやすさをとことん追求しています。その点では追いつけない部分があるかもしれませんが、私たちは使いやすさだけでなく楽しく買い物できることが大事だと考えています。この「楽しい」感覚を、ECで実感していただきたいです。

買い物は、そのブランドが好きなら楽しいもの。当社はこれまでもビジュアルやクリエイティブに強みをもっているので、今後もピーチ・ジョンの世界観を伝えるべく、EC上はもちろん、実店舗も絡めて価値あるコンテンツを作っていきます。

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――世界観を伝えるために、どのようなことに取り組んでいますか?

宮澤 ピーチ・ジョンのブランドコンセプトは、「Love Everyday, Love Future」。女性の人生を美しく輝かせたいと思っています。これまでと同じように自社メディアのコンテンツや『Instagram』などのSNSで世界観を伝え、店舗ではお客様に五感で体験していただきます。

さらに、インスタライブや店舗でのイベント等でお客様とコミュニケーションをとる機会もあります。

これらのさまざまな販売チャネルを活用して、ピーチ・ジョンの世界観をより深く伝えていきたいです。

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※本記事に掲載されている取材内容、プロフィール等の情報は、2019年7月31日時点のものです。
※本記事は2019年7月31日に公開されたGrowth Hack Journalの記事を転載したものです。

プロフィール

宮澤 雅行(みやざわ まさゆき)

株式会社ピーチ・ジョン
カスタマーデライト向上インフラ推進部 / カスタマーデライト向上インフラ推進課 課長
宮澤 雅行(みやざわ まさゆき)

2001年ピーチ・ジョンに入社。物流業務やコールセンターを担当した後、自社HP担当となり制作・運用を行い、自社EC立ち上げにも携わる。2011年以降、通販の売上責任部門に配属となり、
ECサイトリニューアル、アプリ制作など様々なプロジェクトに携わる。2017年には「会社として全体整合性を保ちながら案件を進める。」「スピード感をさらにUPさせる。」というミッションから、カスタマーデライト向上インフラ推進部を設立し、社内横断プロジェクトを進行。 台湾進出に伴うECサイト・アプリの立ち上げにも従事。

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