2026.02.26
「Webに加えてアプリも始めたものの、思ったように売り上げが伸びない……」「チャネルを増やした分だけ運用が複雑になり、現場が疲弊している……」
マルチチャネル施策に取り組む現場では、こうした声がよく聞かれます。ツールを導入して接点を増やせば成果が出ると思われがちなマルチチャネルですが、実際にはユーザーに対して不要な情報を送り続け、顧客体験がかえって悪化しているケースも少なくありません。
なぜ、よかれと思って始めた施策が空回りしてしまうのでしょうか。多くの企業で見られるのが、「適切な順序に沿って取り組みを進められていない」という問題です。
今回は、マルチチャネル施策を確実に成果へつなげるための取り組みを7つのステップに分けて解説します。場当たり的な配信を卒業し、組織として再現性のある施策を回すために必要な取り組みの優先順位を確認していきましょう。
マルチチャネルを検討する際、多くの企業が「どのツールを入れるか」から考え始めてしまいます。
しかし、最初に取り組むべきは、自社のビジネスのどこに課題があり、誰に何を届けるべきかという「共通の目的」と「データの土台」を整えることです。
まずステップ 1で取り組むのは、自社の事業成長を妨げているボトルネックの特定です。この段階では、「どの数字を改善するのが目的達成に向けた最短ルートなのか」という観点から現状を把握していきます。
このとき、「マルチチャネル」という言葉に引きずられ、最初からあらゆる接点を一斉に動かそうとするケースは少なくありません。しかし、最終目標(KGI)に至るプロセスのどこが弱点になっているのかが曖昧なままでは、どれほどチャネルを増やしても成果は得にくくなります。
たとえば、新規獲得は順調でも「2回目の購入(F2転換)」が極端に低いのであれば、そこが改善の焦点となります。このように、目標達成に向けたボトルネックと自社のユーザー属性や反応率を照らし合わせると、自然と勝ち筋のある手段が見えてくるはずです。
一方、ボトルネックと注力すべきチャネルの優先順位がチーム内でうまく共有できていないと、運用の工数ばかりが膨らんでいくことになります。まずは、ゴールを明確にしたうえで、個別の施策に対して「なぜそれをやるのか」という明確な根拠を持てる状態をめざしましょう。
マルチチャネルを進めるうえで避けて通れないのが、バラバラに点在しているユーザーIDの統合です。データ基盤の整備が不十分なままでは、どんな施策を打っても、その評価は常に曖昧なままになってしまうため注意が必要です。
【データの分断によって生じる問題の例】
・ユーザーがチャネルを使い分けていることに気づけない
▼状況:
Aさんには Webで商品を比較検討し、最終的にアプリで購入する習慣がある
▽データの見え方:
Web側では「買わない人Aさん」、アプリ側では「比較せず買う人Bさん」と、システム上は別人としてデータ処理される→ Webでの検討が購入に寄与している事実に気づけず、施策の優先順位を誤りやすくなる
・決済手段ごとの本当のLTVが見えない
▼状況:
AさんはWebでは「クレジットカード」、アプリでは「PayPay」を利用
▽データの見え方:
決済手数料などのコストを、ひとりの顧客の購入履歴にひもづけられない→どの顧客が、どの窓口で、いくら利益を残しているか判別できず、真の優良顧客を特定できない
データは「購入」という結果だけでなく、カート投入や情報の入力有無といった「途中の行動」もひとつのIDに集約されている状態が理想的です。そうすることで初めて、ユーザーがどこでつまずいているのかを把握し、その状況に応じた適切な一手を打てるようになります。
実務上は難易度の高いステップ2ですが、ここをスキップしたパーソナライズは、推測の域を出ないものになってしまいます。
※補足:Repro MAでは、SDKとMA機能を統合することで、この初期実装工数を最大50%削減し、リアルタイムなデータ同期を可能にしています。
データが整い、現状が可視化されるようになると、次に取り組むべき課題が見えてきます。それが、既存の顧客接点に潜む「バケツの穴」を塞ぐことです。
ユーザーは、私たちが想像する以上にささいな理由で離脱しています。たとえば、本人確認のフローが複雑で手間取ってしまう、あるいはプッシュ通知の許諾タイミングが唐突で不信感を抱く。こうしたボトルネックは、行動データを追えば「〇〇の画面で〇%が離脱」といったかたちで明確に可視化されます。まずはデータを基に、ユーザーが「迷う・忘れる・諦める」ポイントを徹底的に排除しましょう。
同時に、「カゴ落ちリマインド」や「誕生日クーポン」といった鉄板施策を確実に実行できる体制も、この段階で整えておくことが大切です。
一見地道で遠回りのように見えるこのステップですが、チャネルを増やすことを考える前に、今いるユーザーの離脱要因を取り除き、フォローの仕組みを整えるといった「当たり前」をきちんとやりきることが、結果として最も効率よく成果を上げるための近道になります。
データ基盤を整え、基本の施策改善ができたら、いよいよ顧客体験を最大化させる実行フェーズへと移ります。
ここからは「全員に同じ情報を送る」という一律の運用を卒業し、ユーザー一人ひとりの行動や状況に合わせた体験の提供へとシフトしていきます。単一チャネルでの最適化から、複数のチャネルをまたいだ一貫性のあるシナリオ実行まで、コミュニケーションの精度を一段ずつ引き上げていくプロセスを見ていきましょう。
ステップ 4では、全員に同じ情報を送る「一斉配信」から脱却し、ユーザー一人ひとりの状況に合わせたコミュニケーションに踏み込みます。
ステップ2でデータの土台が整っていれば、特定のカテゴリを何度も閲覧している人への新着情報配信や、お気に入り登録された商品の再入荷通知など、個々の行動をトリガーにした情報を最適なチャネルで届けることができるようになります。ほかにも、ポイントの失効期限のように「その人にとって無視できない情報」を、タイミングを逃さずに届けていくことも重要です。
このようなパーソナライゼーション施策はすべて、個人データが顧客IDと正しく紐付いているからこそ実現できることです。ただ一律に大量のメッセージを送るのではなく、行動データから「今、その人が何を求めているか」を汲み取ったうえで一通の質を高めていきましょう。
ステップ 5では、いよいよ「プッシュ通知を開かなかった人にだけLINEを送る」「メールで反応がなかった場合に別チャネルでフォローする」といったように、チャネルを横断したコミュニケーションに取り組みます。ただし、この段階でいきなりシナリオを量産してしまうと、かえってユーザー体験を損ねるリスクが高まるため注意が必要です。
よくある失敗がシナリオ同士の干渉です。たとえば、「掃除機カテゴリの閲覧者」と「特定ブランドの閲覧者」にそれぞれ別々のシナリオを設定している場合、条件が重なったユーザーに対して複数の通知が同時に届いてしまうことがあります。こうした状況では、ユーザーに「しつこい」「ちぐはぐ」という印象を与え、ストレスを感じさせることになります。
チャネルが増えるほど、こうした意図しない重複配信は発生しやすくなります。実装前に、「1日に送る上限数」や「優先度の高いメッセージが届く際はほかを止める」といった、チャネルをまたいだ配信制御のルールづくりができているかを忘れず確認しましょう。
マルチチャネルの運用が回り始めたら、次は打率を上げるための検証フェーズに移っていきます。配信のタイミングやコピー、チャネルの組み合わせを変えながら、自社における最適解を探っていきましょう。
ここでポイントになるのが、テストを一度きりで終わらせず、結果をチーム共有の資産として蓄積することです。A/Bテストの結果が個人の経験値に留まったままだと、担当者が変わるたびに同じ試行錯誤を繰り返すことになりかねません。
どんな状況で何を試し、なぜその結果になったのか。背景まで含めて言語化しておくことで、チーム全体の判断の質が底上げされます。こうした地道な知見の積み重ねこそが、将来的にAIを導入して施策の自動化を推進する際の重要な判断材料にもなります。
施策が回り始めたら、最終段階として成果の再現性を高めるフェーズに入ります。
個人の勘や経験に頼る運用を卒業し、検証結果を組織の知見として積み上げるプロセスを経て初めて、AIによる予測や最適化といった、より高度な仕組みを使いこなす準備が整います。
最後のステップ 7では、これまで蓄積してきたデータと知見を土台に、AIによるユーザー行動の予測・施策の最適化を図ります。
ここまでのステップを見てきた方であれば、AIが搭載されたツールだけ導入しても成果につながりにくいことは想像できるはずです。学習するデータが不十分であれば、当然ながらAIの判断も曖昧になってしまうのです。
実際に、下準備なしにAIを導入して運用が劇的に楽になったという事例を私はほとんど見たことがありません。一方で、ステップ 1〜6を経て基盤が整っていれば、「離脱しそうなユーザーの予測フォロー」や「チャネルの自動使い分け」も、高い精度で実行できるようになります。
マルチチャネル施策のゴールは、ツールを使いこなすことではありません。検証を繰り返しながら「なぜ成果が出たのか」という組織としての知見を溜め、そのうえで、人間では対応しきれない膨大なパターンの出し分けをAIに任せていく。こうした考え方のもとでマルチチャネル施策に取り組めば、AIは「よくわからない魔法の杖」ではなく、運用の精度を確実に引き上げてくれる強力な味方となるはずです。
ここまで解説してきた通り、マルチチャネル施策で確実に成果を出すためには、まず足元のデータを整え、地道な検証を積み重ねていくしかありません。
「最新のツールを導入すれば、バラバラなチャネルをAIが魔法のように統合してくれる」
そんな期待を抱く方もいるかもしれませんが、実態はその逆です。基盤が整っていない状態で高度なことをしようとすれば、それだけ運用は複雑になり、ユーザーにはノイズばかりが届くことになります。
マルチチャネル化は、手段であって目的ではありません。自社のユーザーがどこで迷い、どこで離脱しているのか。まずはその事実をデータで捉えるステップ 1から焦らずに進めていきましょう。
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