(編集部注* 本記事は2016年7月7日に公開したものを再編集したものです)
はじめに
みなさんが普段チェックしているアプリの指標は何でしょうか。CPA、DL数、ARPUなど重視している指標はさまざまかと思いますが、今回はアプリの成長においてもっとも重要な指標のひとつである継続率を把握する「リテンション分析」について、その重要性と利用方法をご紹介します。
リテンション(コホート)分析とは?
リテンション分析とは、どれくらいのユーザーがアプリを継続して使い続けているのかを確認することができる分析手法です。『Googleアナリティクス』などのアクセス解析ツールではコホート(共通の条件や属性を持った特定のユーザーグループのこと。コホート分析はもともと人口統計学、疫学などの領域で用いられていました)分析ともいいます。
リテンション分析の重要性
リテンション分析によりアプリの継続率を把握することで、売り上げ、コスト、UXという観点において考えられるメリットはそれぞれ以下の通りです。
メリット①:1ユーザー当たりのアプリの売り上げ(LTV)を把握することができる
アプリの売り上げは「ARPU」(1ユーザーあたりの平均単価)と「アクティブユーザー数」で構成されます。ARPUにアプリの平均継続利用期間をかけたものがLTV(顧客生涯価値)であり、1ユーザーあたりの総売上です。
継続率をKPIとすることでLTV(1ユーザーあたりの総売上)も考慮した施策を考えることができる
xAUを追うことで、アクティブユーザーを増やすための施策を考えることはできますが、1ユーザーあたりの収益を増やすための施策を考えることはできません。継続率はアクティブユーザー数とLTVという売り上げを構成するKPIの両方に関係があるので、アプリビジネスを成功に導くためには必ず押さえるべき指標です。
メリット②:ROIを考慮したユーザー獲得コストの最適化ができる
新規ユーザーの獲得コスト(CPA、CPI)は新規ユーザ施策にかけたコストをDL数で割ることで比較することができます。 しかし継続率を考慮せずCPAのパフォーマンスだけで施策を評価してしまうと、純損失になるものを良い施策として評価してしまったり、収益に貢献しているものを悪い施策と判断してしまう場合があるのです。 例えば、『Twitter』と『Facebook』のアプリインストール広告の両方に広告予算を10万円投じて獲得ユーザー数がそれぞれ120人と150人だった場合、CPA(CPI)は以下のようになります。
一見するとFacebookはTwitterよりもユーザー獲得コストが安いので「Facebook広告により多くの予算を配分しよう」と判断してしまいそうですが、もし両者の継続率が下記のような場合はどうでしょうか。
FacebookはCPAこそTwitterよりも安いですが、翌月の継続率が20%と低く、1ユーザーあたりのLTVがCPAを下回ってしまっていることがわかります。逆にTwitterは翌月継続率が60%と高く、LTVがCPAを上回っているのでアプリの収益につながる獲得チャネルであると判断できるのです。 このように、継続率を把握することでROI(投資利益率)を考慮した獲得施策の意思決定ができます。
新規ユーザー獲得におけるリテンション分析の活用方法は、連載二回目の「ROIを考慮してアプリの新規ユーザー獲得施策を考えよう」で詳しく解説します。
メリット③:アプリの成長につながる改修ができているか効果検証できる
アプリのUX変更や機能追加などがアクティブユーザーの増加に貢献しているか確かめたい場合、xAUは改修による効果を検証するためのKPIとしてふさわしくありません。なぜならアクティブユーザー数は曜日や季節、プロモーションなど様々な外部要因によって変動してしまうからです。
xAUからそうしたノイズを除去するために、初回起動後の継続率を加味したアクティブユーザー数を指標にしているアプリ事業者も見られ、例えばソーシャルメディアの『Pinterest』は新規サインアップ後1週間以内に1回以上『Pinterest』を使っているユーザーの割合を「1d7s」という指標で定義しています。
また、ソーシャルゲーム会社のドリコムは5日間連続でゲームをプレイしているユーザをDAUの代替指標として用いているそうです。
リテンション分析画面(コホート画面)の見方
ここからは『Repro』のリテンション分析画面を例にできることを説明していきます。画面の基本的な見方に関してはGoogleアナリティクスのコホート分析画面と同じなので、今Reproを利用されていない方もこれを機会にぜひ覚えてください。
横軸:日数の経過による継続率の変遷
横軸で日数の経過による継続率の変化を見ます。日ごとの継続率の変遷を比較することで、新規ユーザーの継続率が高い施策を把握することができます。
縦軸:翌日、7日後などx日後時点での継続率
縦軸では日ごとの翌日継続率や7日後継続率を見ます。x日後時点での継続率を比較することで、チュートリアルなど初期段階のユーザーを定着させるプロセスが改善されているかを把握することができます。
すべてのユーザーと新規ユーザーのコホートをわける理由
Reproのリテンション分析では「すべてのユーザー」と「新規ユーザー」にわけています。新規ユーザーだけを対象としてリテンション分析をすることで、UXの変更などすでにアプリを使い慣れているユーザーのバイアスを排除し、より正しい効果検証を行うことができるからです。
まとめ
いかがだったでしょうか。DLされたアプリの翌日離脱率は平均71%にも上るというデータもあります。リテンション分析を理解してアプリの正しい成長につなげましょう。次回はリテンション分析を使った新規ユーザー獲得の最適化についてお伝えします。